統合失調症患者における表情認知および情動に関連した脳血流変化を調べるために、アイマークレコーダ(EyeMarkRecorder;EMR)および多チャンネル近赤外線スペクトロスコピー(Near-infraredspectroscopy)NIRSの同時計測より、乳児の表情刺激を用いた情動関連探索課題時の眼球運動および大脳皮質の血流変化を健常者と比較検討することを目的とした。その結果、確認課題中の{笑い}表情において、注視停留点の総移動距離は、統合失調症群が健常群に比べて有意に短かった。さらに、健常群では、{笑い}表情に比べて{泣き}表情で脳血流増加が認められた。一方、統合失調症群では、{泣き}表情以上に{笑い}表情に対して、脳血流増加が認められた。以上結果から、統合失調症患者の情動機能の特性として、{笑い}という陽性情動認知に歪み(ミスマッチ)が存在することが示唆された。また、本課題による多チャンネルNIRSとEMRの同時計測は、統合失調症患者の対人関係を反映した情動関連認知機能を探る精神生理学的指標として有用であると考えられた。
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