H23年度のうちに、AGERのresequenceによって16か所の新規変異を含む40か所の変異・多型を同定した。統合失調症との関連解析では、intron3にある2つのSNPのマイナーアレルがプロテクティブな因子であり、intron8にある2つのSNPがリスク因子であることを同定した。また、これらの変異・多型のうち、プロモーター領域の63bpの欠失変異がesRAGEの血中濃度を強く抑制する機能的変異であること見出し、他領域の二つの変異(rs17846798、rs2071288)と連鎖不平衡の関係にあることも明らかにした。以上を踏まえて、上述した機能的変異部位でリスクアレルを有するヒトの株化リンパ球を用いて、RAGEの発現をタンパクレベル(ウェスタンブロット)で確認した。RAGE抗体は論文等で言及されているものを4種類購入し、ポジティブコントロールとしてRAGEをStableに発現するCell lineを購入した。残念ながら、ヒト株化リンパ球のサンプルではRAGEの発現は確認されず、それ以上の発現解析は困難であった。 カルボニルストレスを呈する統合失調症の臨床特徴については、カルテ調査をすすめ、入院患者に多い、入院回数が多く、入院期間が長い、教育年数が低い、そして抗精神病薬の投与量が多いことが判明し、Kaneらが定義する治療抵抗性統合失調症に類似する臨床特徴を有していることを明らかにした。またビタミンB6が多くの精神病症状と負に相関することを同定した。以上から、治療抵抗性統合失調に対するビタミンB6療法がクロザピンにとって代わる有望な治療薬となる可能性を提示し、なおかつ既にビタミンB6 療法の医師主導治験を実施して一定の成果を得ている。以上のように、カルボニルストレスと統合失調症の関係性を明らかにし、臨床応用にまで展開して成果を得ることができたと考えている。
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