抗うつ薬の慢性投与によりラット脳内でrhotekin(RTKN)の発現が増加したことから、抗うつ薬の奏効機序と考えられている神経新生過程におけるRTKNの割役について検討した。ウエスタンブロットおよび蛍光免疫染色により、培養神経幹細胞を神経細胞に分化させることでRTKNの産生が増加することが明らかとなった。そこで、神経分化時にRTKNをsiRNAでノックダウンし、生存率、分化率、神経突起長といった神経分化に関わるパラメータについて測定を行った。RTKNノックダウン72時間後より、MTTアッセイによるミトコンドリア酵素活性の低下、ヘキスト染色による核の委縮がみとめられた。さらに、ノックダウン96時間後には細胞数の減少がみとめられた。したがって、RTKNは神経分化時の生存維持に必要であると考えられる。次に、神経マーカーであるTuj1の免疫染色を行ったところ、Tuj1陽性細胞の減少とTuj1陽性突起伸長の低下がみとめられた。これらの変化は、ノックダウンによる細胞数の減少が生じる前からみられるため、Tuj1陽性細胞が死滅したことによる2次的な結果ではなく、RTKNが分化や突起伸長に重要であることを示している。以上から、RTKNは神経幹細胞から神経細胞への分化、および、その後の突起伸長や生存維持に重要な役割を果たすシグナル分子であると考えられる。これらの結果は、抗うつ薬によって生じる神経新生過程をRTKNが仲介している可能性を示唆している。
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