研究課題
研究の最終年度として、統合失調症、および大うつ病性障害に対する遺伝子関連解析を指標とした解析でABCトランスポーター遺伝子ファミリーに焦点をあてた研究を継続して行なっている。既にこれまでの解析から、血液脳関門に発現して、数々の薬剤や生体毒素に対する排出ポンプとして機能し、同時にストレスホルモンであるグルココルチコイド(コルチゾール)を基質の一つとして脳を保護する役割を持つABCB1(P糖タンパク質)の機能低下型遺伝子が、うつ病発症のリスク要因として働くことが示唆する成果を報告することができた。上記のグルココルチコイドは視床下部―下垂体―副腎系(HPA系)の最終産物であることから、ABCB1のHPA系制御遺伝子としての側面が現れた結果であると予想された。HPA反応系は、大うつ病性障害においてのみでなく、統合失調症においても、その異常が示唆されている。そのため、ABCB1遺伝子の機能多型と統合失調症との関連にも目を向け、発症リスクとの関係を調べた。全体としては大うつ病性障害ほどの影響は検出できないという結果であったが、今後サンプルの数が増えた場合、さらに男女で分けた解析を進めた場合には、有為な結果が期待できるものであった。また、HPA系を制御するABCB1以外の遺伝子で、ABCB1との相互作用でストレス性精神疾患の発症を規定する可能性のある遺伝子多型にまで解析対象を広げることで、HPA反応系、認知機能などに影響を及ぼす遺伝子機能多型の存在について分かってきており、さらなる研究の可能性を示すことができた。
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