研究課題
現在遂行中の一連の研究は、統合失調型パーソナリティが統合失調症圏の患者から健常者へと連続的に分布する特性であることを実証し、統合失調症の病態生理解明の一端となるエビデンスを供することを目的としたものである。 まず、統合失調症が視床下部-下垂体-副腎系(HPA系)機能異常と関連することに着目し、質問紙で測定した健常者の統合失調型パーソナリティ傾向と、dexamethasone/CRHテストによるコルチゾールの反応性との関連を調べた。本研究により、統合失調型パーソナリティがコルチゾール反応の低下(過剰抑制)と関連していることが明らかになった(Hori et al. 2011)。 次に、統合失調症の疫学的研究において、冬生まれが統合失調症発症のリスクを10%程度高めることが知られているため、健常者の統合失調型パーソナリティについても同様の出生季節の影響がみられるかを調べた。その結果、冬生まれの健常者では他の季節に出生した健常者に比べて統合失調型パーソナリティ傾向が有意に高いことが示された(Hori et al. 2012)。 さらに、双極II型障害患者と大うつ病性患者を対象とした研究においても、統合失調型パーソナリティの程度や統合失調症遺伝負因が認知機能障害と関連することを見出し、第7回日本統合失調症学会(奨励賞受賞)と3rd Biennial Schizophrenia International Research Society Conference(Travel Award受賞)で発表し、論文が最近採択された(Hori et al. in press)。 これらの知見により、統合失調症と統合失調型パーソナリティ傾向の連続性が支持されるとともに、気分障害患者の病態においても統合失調型の素因が重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
健常者、気分障害患者、統合失調症患者を比較的多数リクルートし、統合失調型パーソナリティと認知機能の評価、神経内分泌検査、遺伝子多型タイピングを行い、その結果を順次学会・論文で発表しているため。
健常者、気分障害患者、統合失調症患者のリクルートを継続し、統合失調型パーソナリティと認知機能の評価、神経内分泌検査、遺伝子多型タイピングを行う。サンプルが必要数に到達次第、これらの検査結果の間の関連についての包括的な解析を行い、統合失調症と統合失調型パーソナリティとの連続性を明らかにする。
主として、神経内分泌検査のための試薬、遺伝子多型タイピングのための試薬、学会(国内・海外)発表のための旅費等に使用する。
すべて 2012 2011 その他
すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 15件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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