研究課題/領域番号 |
23791374
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研究機関 | 公益財団法人神経研究所 |
研究代表者 |
中村 真樹 公益財団法人神経研究所, 研究部, 研究員 (70375054)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 閉塞性睡眠時無呼吸症候群 / 視覚性抹消課題 / 数字符号照合検査 / 記憶更新検査 / 位置ストループ課題 / MRI |
研究概要 |
重症の閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者において、日中の眠気だけでなく、高脂血症・糖尿病といった生活習慣病や脳梗塞をはじめとする虚血性疾患のリスクの上昇、注意・集中力低下といった認知機能への影響が指摘されている。そこで、当院を初診受診した、未治療の重度閉塞性睡眠時無呼吸症候群(無呼吸低呼吸指数≧40/時間)を対象に、治療導入前に、血液生化学検査(肝機能、脂質代謝、耐糖能)、脳MRI画像検査、および、認知機能として、選択的注意能力を評価する視覚性抹消課題、注意分配能力を評価する数字符号照合検査(SDMT)、記憶更新検査、および葛藤条件の監視機能を評価する位置ストループ課題を行った。なお、それぞれの課題の得点はそれぞれの課題の健常者における年齢毎の平均値をもとにz値に変換した。 対象は、35歳以上の男性12例(平均年齢48.1±8.5歳)であり、平均AHIは62.5±15.3/h、中途覚醒指数は54.5±16.3/h、うち呼吸関連覚醒指数は47.6±18.8/h、最低SpO2は70.0±10.1%、総睡眠時間におけるSpO2<90%の占める時間は17.8±14.4%であった。自覚的な眠気の尺度であるESS(エプワース眠気尺度)スコアは標準意欲評価のスコアおよび視覚性抹消課題の所要時間と正の相関を認め、中途覚醒指数は視覚性抹消課題の正答率と負の相関を認めた。最低SpO2が位置ストループ課題遂行時間と負の相関を認めた。 この結果、自覚的な眠気の強さと意欲・注意力持続、および、中途覚醒の頻度と注意力低下に関連があることが示唆された。また、睡眠時の呼吸関連指数に関しては、最低SpO2のみが高次脳機能に影響を与えていた。なお、虚血性脳病変の確認のために、脳MRI画像検査を施行した結果、視認できる虚血性病変は全例、確認されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
エントリーした被験者の臨床データは予定通り収集できているが、条件を満たす対象群が予定より少ない状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
当院を初診受診した、未治療の重度閉塞性睡眠時無呼吸症候群(無呼吸低呼吸指数≧40/時間)をリクルートしつつ、既にエントリーしている被験者群に対して、安定して6か月以上の経鼻的持続陽圧呼吸法(nasal Continuous Positive Airway Pressure:nCPAP)による治療が継続された被験者に対して、血液生化学検査(肝機能、脂質代謝、耐糖能)、脳MRI画像検査、および、認知機能として、選択的注意能力を評価する視覚性抹消課題、注意分配能力を評価する数字符号照合検査(SDMT)、記憶更新検査、および葛藤条件の監視機能を評価する位置ストループ課題を行う。 治療前後において、これらの臨床症状・臨床データの可逆的変化および非可逆的変化について、以下を検討する。(1) CPAP治療によるFA・ADC画像の変化の検討:認知機能・EDS(日中の眠気)改善群において、これらの改善がCPAPによる間歇的低酸素状態の改善による脳の可逆的改善と関連を示すかを検討する。(2) 認知機能・EDS非改善群におけるCPAP治療前脳画像の比較検討:認知機能・EDS非改善群におけるCPAP治療前から認められるFA・ADC画像上の微細な脳虚血性変化の特徴、および、FA・ADC画像所見と従来のMRI画像によるFazekas 分類の関連を検討する。(3) 認知機能・EDS非改善群の予測因子の検討:喫煙・飲酒、年齢、性別に加え、治療前後の血液生化学検査、睡眠時の動脈血酸素飽和度(最低値および平均値)やAHIなどの終夜PSG検査指標、従来のMRI画像によるFazekas分類から、認知機能・EDS非改善群の危険因子を推定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
6カ月以上のCPAP治療継続群全例に対する脳MRI画像の再検査に対して、撮像費が1名につきおよそ10,000円、時間を要する認知機能検査に対する謝金として1名につき5,000円の謝金を要する。画像データは1症例につき治療前後の2画像で約2ギガバイトの容量があるため、個別保存用のDVD-R、および、高容量のデータバックアップシステム(HD-QSS4.0T)を購入する。また、認知機能検査の評価紙20部を4セット購入する。 多大なデータの解析を行うため、検査および解析補助員の協力を必要とするため、これらにたいする謝金も要する。 研究結果を、国内の学会にて2件、海外での国際学会にて2件発表する。また、英語専門誌に研究結果を投稿する。
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