方法:当院通院中の、精神疾患の既往および向精神薬服用歴のない、PSG検査にてAHI>40/h以上の重度OSASと診断された35歳以上の男性12例(平均年齢48.1±8.5歳)を対象として、日本高次脳機能障害学会が作成した標準意欲評価(CAS)、および標準注意検査(CAT)のうち、選択的注意能力を評価する視覚性抹消課題、注意分配能力を評価する数字符号照合検査(SDMT)、記憶更新検査、および葛藤条件の監視機能を評価する位置ストループ課題を行った。それぞれの課題の得点はそれぞれの課題の健常者における年齢毎の平均値をもとにz値に変換した。また、3.0TのMRIスキャナにより撮像したMR-DTIを元に作成したFA画像およびADC画像、SPM8-segmentationによりT1画像から作成した灰白質画像・白質画像において相関のある脳領域をSPM8を用いて解析した。 結果:対象の重度OSAS患者のAHIは63.9±15.4/h、中途覚醒指数は54.0±17.1/h、うち呼吸関連覚醒指数は49.0±19.2/h、最低SpO2は70.5±7.2%、総睡眠時間におけるSpO2<90%の占める時間は18.8±13.4%であった。臨床指標と認知課題において、ESS(エプワース眠気尺度)スコアが標準意欲評価のスコアおよび視覚性抹消課題の所要時間と正の相関を認め、最低SpO2のみが視覚性抹消課題と位置ストループ課題の遂行時間と負の相関、数字符号照合検査(SDMT)の成績と正の相関を認めた。脳画像解析の結果、認知機能への影響を示した最低SpO2は、右下側頭領域、両側中前頭領域のFA値と負の相関、両側海馬傍回の灰白質密度と負の相関を認めた。 考察:重症OSASにおける低酸素状態が脳に微細な構造変化をもらたし、その結果、わずかながらにも認知機能に影響を与えていることが示された。
|