近年、放射線感受性の低い腫瘍内には、周期的に低酸素-再酸素化サイクルを繰り返す間欠的低酸素領域が存在し、治療抵抗性や浸潤・転移など腫瘍悪性化に強く寄与している事が明らかとなってきた。本研究の目的は、間欠的低酸素が腫瘍細胞の放射線感受性に与える影響を明らかにし、その原因を探索することである。 平成23年度では、1時間の低酸素と30分の再酸素化を6回繰り返すことで、最も腫瘍細胞の放射線抵抗性が増強した。また再酸素化の回数を増やす毎に、活性酸素種ROSの産生と低酸素誘導因子HIF-1alphaの発現誘導が増強され、細胞内レドックス状態の変化と低酸素適応応答シグナル経路が活性化していることが示唆された。 平成24年度では、実際のC6グリオーマ細胞内に間欠的低酸素が存在するか否かを免疫組織化学にて検討した。pimonidazoleおよびEF5という二種類の低酸素マーカーを間隔をあけて投与することで、6時間に変化した低酸素領域を描出することに成功した。加えて、間欠的処理後の細胞の細胞周期をPI染色およびリン酸化ヒストンH3に対する免疫染色を行うことで、間欠的低酸素処理によって、放射線感受性の高いS期初期に分布する細胞数の減少と感受性の低いG2期細胞の増加が起こっていることを明らかにした。 以上、本研究実施期間を通じて、実際の腫瘍において起こりうる間欠的低酸素は、再酸素化に伴う活性酸素種の増加と腫瘍細胞の細胞周期調節を介して放射線抵抗性を高めていることが明らかとなった。これらの結果は、間欠的低酸素の治療標的としての重要性を意味するだけでなく、今まで一括りに考えられてきた低酸素のより複雑な生物学的作用を示唆するものである。
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