研究課題/領域番号 |
23791380
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
THA K.K. 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (20451445)
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キーワード | 拡散テンソル / 神経難病 / 頚髄 / 脳 / MRI |
研究概要 |
神経難病「筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脊髄小脳変性症(SCD)、多発性硬化症(MS)、視神経脊髄炎及び類似疾患(NMO spectrum disorders)を含む」による社会経済的な負担の軽減、患者のQOLの向上には、これら疾患の早期診断、治療効果や予後の早期予測が重要である。これら疾患の早期診断、治療効果・予後の早期予測のための適切な非侵襲性指標はない。本研究は、脳と頚髄の拡散テンソル(DTI)による神経難病の評価のための非侵襲性指標の開発を目的とした。 DTIの変化は微細であり、患者さんのデータのみから異常を指摘することは難しい。よって、評価には健常人データとの統計学的な比較が必要である。また、DTIのパラメータは年例、部位によって異なる可能性があり、評価には同年代・性別の健常人データとの比較が望まれる。当院では健常人のDTIデータを取得してあるが、年代によってはデータが不足していたため、平成23及び24年度では、不足していた健常人データを収集し、全111例「20~60歳代、左利き8名を含む」の正常人の脳と頚髄のDTIデータベースを作成した。それを用いて、正常人頚髄や脳・頚髄の錐体路の拡散テンソル特徴にてついて検討し、結果を国内・国際学会で報告した。第40回日本磁気共鳴医学会では大会長賞を受賞した。 また、当院自主臨床研究審査委員会の承認を得て、当院神経内科に受診した神経難病(対象疾患は、ALS、SCD、MS、NMO spectrum disorders)またはその疑いの患者のDTI撮像を開始した。現時点で、ALS9例、MS9例、NMO spectrum disorders9例の複数回の撮像を修了している。臨床情報は、研究努力者の矢部一郎准教授の努力を得て、取得した。現在、患者症例の収集を続けるとともに、患者症例の画像解析、画像と臨床所見との相関について検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、脳と頚髄の拡散テンソルによる神経難病(早期診断、治療効果・予後の早期予測)のための非侵襲性指標の開発を目的としている。平成24年度の研究計画は、①症例収集、②臨床データの収集、③MRI撮像、④データの解析である。 研究計画に従い、当院自主臨床研究審査委員回の承認「承認番号は11-0077」を得て、本研究への協力が得られた神経難病患者のDTI撮像を施行している。現在、全27名の神経難病患者(ALS9例、MS9例、NMO spectrum disorders 9例)の複数回のDTIデータの取得を修了している。臨床所見は研究協力者の矢部一郎准教授(当院神経内科)の協力を得て、取得している。また、患者のDTIデータとの比較のための健常人のDTIデータの収集も行った。健常人のDTIデータは目標数に到達している「全111例、20~60歳代、8名の左利きを含む」。取得した健常人のDTIデータを用いて、健常人の頚髄や脳と頚髄の錐体路の拡散テンソルの特徴について検討し、国内・国際学会で報告した。現在、患者症例の画像データ解析、初回時のDTI所見と臨床所見との相関について検討している。よって、当初の計画に従い、順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
①症例収集:引き続き、対象患者を収集する。本研究への協力について、患者または家族(患者自身が同意を得るこのできない場合)から同意を得る。 ②臨床所見の収集:必要な臨床データを収集する。必要に応じて、臨床データの解釈などについて、研究協力者の矢部准教授と打ち合わせを行う。 ③MRI撮像:引き続き、患者のDTIデータを取得する。 ④ データ解析:患者群と健常群の脳・頚髄のDTIパラメータの違いについて、統計学的検討を行う。患者症例の複数回の撮像が修了した段階で、治療反応の良好群と不良群との間の治療開始時のDTIパラメータの違いやDTIパラメータの経時的変化の違いを検討する。異なる治療群間のDTIパラメータの変化についても検討する。また、治療開始前や経過中のDTIパラメータと治療効果、予後との相関を調べる。必要に応じて、統計解析法について、統計科学専門家に助言を求める。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、画像データを保管するためのバックアップや画像データの転送のためのCD-Rやフラッシュメモリー、外付けハードディスクの購入、国内外での情報収集・研究打ち合せ、成果発表のための経費、論文投稿のための校正・投稿料などに、研究費の使用を計画している。 平成24年度は、MRI検査費用及び臨床研究の損害保険の費用が発生していなかったため、使用残額が生じた。残額は、平成25年度の研究において、情報収集・研究打ち合わせ、成果発表のための経費や画像データ保存に必要な物品数を増やすなど、有効活用する予定である。
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