研究課題/領域番号 |
23791383
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
吉野 浩教 弘前大学, 保健学研究科, 助教 (10583734)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 放射線 / 自然免疫 / 樹状細胞 / パターン認識受容体 |
研究概要 |
樹状細胞は免疫応答において重要な細胞で、がん治療における寛解後の良好な予後のための免疫力強化という点でも重要な役割を担っている。放射線治療は有効ながん治療法の一つであるが、治療過程における樹状細胞およびその前駆細胞に対する放射線の影響についての詳細は不明である。さらに、単球や樹状細胞が病原体に普遍的に存在する分子パターンを認識するパターン認識受容体に及ぼす放射線の影響評価はほとんどなされていない。そこで本研究課題は、樹状細胞の前駆細胞であるヒト単球から樹状細胞への分化誘導における放射線の影響を明らかにするとともに、免疫細胞におけるパターン認識受容体に対する放射線の影響を検討する。本年度は、ヒト樹状細胞の分化誘導における放射線の影響解析を中心に行った。実験は、献血バフィーコートから分離したヒト単球にX線を照射し、照射約1日後に既報のサイトカインの組み合わせにより樹状細胞へ分化誘導を行った後、細菌細胞壁構成成分であるリポ多糖および炎症性サイトカインで刺激し、表面発現抗原および機能解析を行った。その結果、X線照射単球由来樹状細胞は非照射対照群と比べて、リポ多糖刺激後におけるT細胞を刺激する分子の発現やサイトカイン産生などが著しく低下していた。一方で、炎症性サイトカイン刺激後ではこれら低下は観察されなかったことから、放射線に曝露された前駆細胞由来樹状細胞は炎症性サイトカインに対する応答性は比較的維持しているものの、病原菌に対する応答性が著しく低下することが示唆された。また、代表的なパターン認識受容体であるToll様受容体に及ぼす放射線の影響を、単球系細胞株THP1細胞を用いて評価したところ、Toll様受容体発現に及ぼす放射線の影響は免疫細胞の分化段階により異なることが明らかとなった。次年度は、パターン認識受容体に及ぼす放射線の影響をより詳細に解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定と順番を変更し、本年度はヒト樹状細胞の分化誘導における放射線の影響解析を中心に行ったが、研究は順調に進展している。また、パターン認識受容体に対する放射線の影響解析も既に本年度から解析を始めており、引き続きより詳細な解析を次年度に行う。
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今後の研究の推進方策 |
当初は本年度にパターン認識受容体に対する放射線の影響解析を中心に行う予定であったが、ヒト樹状細胞の分化誘導における放射線の影響解析が順調に進展したため予定を変更しその解析を中心に行った。従って、当初の計画を変更し、次年度にパターン認識受容体に対する放射線の影響解析をより詳細に行う。その他の研究計画については申請書の研究経過の通りに遂行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は本年度にパターン認識受容体に対する放射線の影響解析を中心に行う予定であったが、予定を変更し、ヒト樹状細胞の分化誘導における放射線の影響解析を中心に行った。そのため、本年度の支出が予定より少なくなった。次年度にパターン認識受容体に対する放射線の影響解析を詳細に行うため、繰り越した分の助成金をその実験に使用する。また、東日本大震災の影響により中止になった学会があるため、本年度に予定していた研究成果発表のための旅費を次年度に使用する。その他の研究費の使用計画については申請書の通りに遂行する。
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