研究概要 |
脳脊髄液シャント術を予定している特発性正常圧水頭症(idiopathic normal-pressure hydrocephalus, 以下iNPH) 5例(年齢78.6±4.7歳)、健常高齢者10例(年齢70±2.8歳)、アルツハイマー病患者18例(年齢71.9±5.4歳)に対し、11C-BF227と陽電子放射型断層撮影(Positron Emission Tomography、以下PET)を用いた脳内のアミロイドβ蛋白のイメージングを行った。各関心領域(前頭葉、側頭葉、頭頂葉皮質、後部帯状回)の標準取込値(Standard Uptake Value, 以下SUV)の平均を算出し、小脳を参照領域として小脳の平均SUVとの比をとって、各関心領域のSUV ratio(以下SUVR)を示した。前頭葉、側頭葉、頭頂葉皮質、後部帯状回のSUVRの平均を大脳皮質SUVRとした。iNPH患者の大脳皮質SUVRと、健常高齢者群、アルツハイマー病患者群の大脳皮質SUVRと比較した。iNPH例についてはPET撮像後シャント手術を行い、3カ月後に治療効果を評価した。iNPH群のSUVRは1.20±0.07、健常高齢者群は1.11±0.08、アルツハイマー病患者群は1.31±0.09であった。健常高齢者群とアルツハイマー病患者群を分けるSUVRの閾値を1.2とすると、iNPHの2例は閾値以上、3例は閾値以下の値を示した。以上によりiNPHにおいてはアミロイドβ蛋白が集積している例と集積していない例があることがうかがわれた。今後iNPHの症例をさらに蓄積して、アミロイドPETイメージングで評価した脳におけるアミロイドβ蛋白の集積量とシャント術による治療反応性との関係について解析を行い、シャント術前のアミロイドPETイメージングの実施がシャント術による治療効果を予測することに有効か否かを検証する。
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