研究課題/領域番号 |
23791389
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
野宮 琢磨 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 医長 (60436201)
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キーワード | 酸化ストレス / 放射線照射 / 皮膚反応 |
研究概要 |
ラット Wistar種メス6ー7週齢を用いた。麻酔にはジエチルエーテル吸入と抱水クロラール腹腔内注入を用い、滅菌したアクリル板にラットを固定し、右大腿部に放射線照射を行った。放射線は4メガボルト電子線を用いて3ミリ厚の水等価ボーラスを被せ、右大腿部皮膚以外の足関節には3ミリの鉛板をおくことにより放射線を遮蔽した。右大腿部への照射は0Gy(グレイ)(コントロール群)、70Gy群に分けて70Gy群は一回で照射を行った。コントロール群は70Gy群と同様に麻酔処置とアクリル板への固定を行い、放射線照射のみ省略した。照射後は麻酔下に速やかに右大腿部皮膚を切除しマイナス80度にて凍結保存を行った。70Gy群も同様に速やかに右大腿皮膚を凍結保存した。同様の手順で照射を行い、照射後3日目と16日目の0Gy群、70Gy群のラット右大腿部皮膚を切除して凍結保存した。これらの組織切片は2ミリ角に裁断されRNA抽出処置の前処理が行われた。前処理された凍結切片はTRIzol Reagent, RNeasy Mini Kitを用いてTotal RNAが抽出された。得られたTotal RNAはリアルタイムPCR受託解析サービス(フィルジェン社)に送付され、解析が行われた。解析に用いられた遺伝子セットはOxidative Stress and Antioxidant Defense: PARN-065を使用した。まだ解析結果が十分に吟味されてはいないが、0Gy群のコントロールと比較して70Gy群16日目の検体ではNOS(一酸化窒素合成酵素)遺伝子の発現が50倍以上に増幅されていたり、SOD(スーパーオキサイドジスムターゼ)と呼ばれる抗酸化遺伝子の発現が4倍以上に増幅するなど興味深い所見が得られた。今後はより詳細な解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現状は実験進捗、データ解析などおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
現状ではコントロール群と高線量照射群の照射皮膚検体からリアルタイムPCRによるRNAレベルでの遺伝子発現データが得られた。今後は90種類ある酸化ストレス関連遺伝子の関係相関図を作成し、照射におけるストレス反応に対する活性化遺伝子とパスウェイを解析していく予定である。また、これらの解析データをまとめ、学術集会における発表と論文執筆を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験データの不足分を補う予備実験として研究費を使用する可能性がある。また、得られたデータを解析するための高性能パーソナルコンピュータや解析に用いる関連ソフトウェアを購入する予定である。また、学術集会への発表のため海外渡航費用などの旅費や学会参加費に使用する予定である。英語論文執筆の際には英文校正費、学術文献出版費用等に研究費を使用する予定である。
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