研究課題
本研究は、呼吸性移動・変形を伴う臓器(肺)に対する放射線治療(粒子線治療)の精度向上のために、4次元CT画像を用いて臓器動態を定量化し、時間的変動を考慮した線量分布や線量体積ヒストグラム(DVH)等、すなわち4次元治療計画を評価することにより、照射方法の検証及び最適化を行うことを目的としている。本年度は、4DCTを用いた呼吸性移動臓器の動態定量化について、変形フュージョン(レジストレーション)ソフトウェアを利用し、実臨床データを利用できる環境を構築した。これにより、異なる体位で撮影されたCT画像同士や、呼吸性移動や変形を伴うCT画像同士の動きを追えることが確認できた。 動きを考慮した線量分布を得るために、10%毎に再構成された4D-CT画像に対して、計画と同条件にて線量分布計算を行った。それら4D-CT各位相で計算された線量分布について、変形レジストレーションソフトを用いて各位相の線量分布を呼吸同期CT画像上に移し、ぞれぞれ単一の位相について、また、いくつかの位相間について積算することでそれぞれの位相や位相範囲内の積算線量分布を求めた。積算する位相の範囲をいくつか想定し、それらの標的体積に対する線量カバレージについて調べた。その結果、積算した線量分布では、実際の呼吸ゲートよりも広範囲でゲートをかけたと想定したものでも、標的への線量がカバーされることが示された。これはゲート照射の堅牢性を示しており、現実的に多少の位置ずれや再現性のずれが許容されることがわかった。また、この手法を用いることにより、より長時間のゲートを採用して治療の時間的な効率を上げられる可能性も示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究実施計画では、本年は4DCTを用いた呼吸性移動臓器の動態定量化および、体位移動を考慮した重粒子線治療計画における合成線量分布評価を行うこととしており、実際はそれに加えて時間変動を伴う4DCT画像に対する線量分布の評価まで開始することができたため、概ね順調に進展していると考える。
変形レジストレーションソフトウェアを利用することにより、目的とする呼吸性移動や変形といった時間的な変化を考慮した重粒子線の線量分布を評価することが可能となった。ここでは使用するソフトウェアの変形の特徴や精度に依存する。しかしながら、このようなソフトの特徴や精度は、使用するCT画像により異なり、十分には明らかになっていない。そこで、このような変形の特徴や精度を理解した上で、実臨床に用いていくために、様々な画像を用いて変形の特徴や精度を把握する必要がある。今後はそのような目的を含めて実臨床画像を用いた実例数を増やしていく予定である。
多くのデータを処理するための計算機やソフトウェア、結果を報告するための国内外学会の参加費、論文投稿にかかる費用に使用する予定である。上記計算機やソフトウェアは前年度購入予定であったが、未購入のため次年度購入予定である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件)
Cancers
巻: 3 ページ: 4046-4060
DOI:10.3390/cancers3044046
放射線化学
巻: 92 ページ: 33-37
http://www.radiation-chemistry.org/kaishi/092pdf/92_33.pdf