昨年度に引き続き、拡散区強調画像(DWI)に関してシーケンスの改善などの撮像条件最適化を行った。それを用いて、より安定して錐体路および感覚神経を描出することを健常人ボランティア撮像にて確認をした。この結果に関して、第20回国際磁気共鳴医学会大会にてポスター発表した。また手法の一部解説を執筆した。 錐体路(運動野)と感覚神経(感覚野)を接続していると言われるU-fiberの描出も全例で可能であった。また健常人ボランティアにおいて、運動野におけるfunctional MRIの賦活部位を用いて錐体路を分離描出することは可能であった。しかし、感覚野におけるfunctional MRIの賦活部位を用いて感覚神経走行を描出することができなかった(手動での感覚神経描出は可能であったが、functional MRIの賦活部位には一致しなかった)。これに関しては現在考察および検討中である。 そこで、描出が安定しているDWI(脳白質神経走行描出)のみで、脳疾患患者への応用を試みた。上記の最適化したDWIの条件を用いて、脳疾患患者19名(うち2名は術後比較も含む)21件において錐体路および感覚野における脳白質神経走行描出を行った。健側・患側どちらにおいても、全例で錐体路および感覚神経走行を描出することができた。疾患側の神経走行に関して、浮腫の影響により従来法(拡散テンソルtractography)では描出が困難であったが、本法(Q-ball imaging tractography)を用いることで描出能が向上することもわかった。 また2例に関してではあるが、脳腫瘍術後に同一の撮像を行った。これにより、術前と術後での描出能の差を比較検討することができた。
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