平成24年度までに、p-ヨード-trans-デカリンベサミコール(PIDV)を開発し、PIDVがin vitroにおいて、σ-2受容体に親和性と選択性を有することを見出した。σ-2受容体は乳がんなど、細胞分化が活発な腫瘍に多く発現することが知られているが、臨床応用可能なσ-2受容体選択的リガンドは未だ開発されていない。科学研究費助成最終年度となる平成25年度は、PIDVについて更なる評価を行ったので、以下に報告する。 125I(半減期: 59.4日)で標識した[125I]PIDVを用いて、脂溶性を評価する指標である分配係数を測定した結果、分配係数(log P値)は1.78±0.03であった。一般的に、log P値が2~3の化合物は血液-脳関門を通過して、薬物脳内移行性を示す傾向があるとされているので、PIDVの脳内移行性は低いことが予想される。次に、[125I]PIDVとヒト由来乳がん細胞MCF-7(Michigan Cancer Foundation-7)を用いて、in vitro薬物細胞内取込実験(37℃; 15、30、60、120分)を行い、σ-2受容体親和性を評価した。その結果、control群で60分後に[125I]PIDV細胞内取込量が最大値を示し、阻害剤haloperidol(10 μM)を加えた群では、[125I]PIDVの細胞内取込が強く阻害されることが明らかになった。以上の結果より、新たに開発したPIDVのσ-2受容体選択的リガンドとしての大きな可能性を見出したと考えている。
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