研究課題/領域番号 |
23791405
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
山田 哲 信州大学, 医学部附属病院, 助教 (80419407)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 肝予備能 / 画像 |
研究概要 |
本研究の最終目的は肝MR画像から血管支配の形態情報と局所的な肝予備能の機能情報を組み合わせた肝治療システムを構築することである.このうち,平成23年度は以下の二つの課題に取り組んだ.課題1)MR信号値とインドシアニングリーン(ICG)検査値の関連,課題2)肝区域と血管支配.その結果,肝細胞特異性造影剤である gadoxetate disodium を用いた造影MR画像における肝および脾の信号強度ならびに肝体積から求められる Hepatocellular Uptake Index (HUI) と最も信頼性の高い肝予備能の指標とされているICG負荷試験との間に高い相関があることを明らかにし,国際的な学術誌に報告した(Quantitative evaluation of liver function with use of gadoxetate disodium-enhanced MR imaging. Radiology 2011; 260:727-733).一方,画像上の肝動脈の形態から血流支配域を推定する手法を考案し,国際的な学術集会で報告した(Computerized estimation of quantitative segmental liver reserve after transcatheter arterial chemoembolization by use of gadoxetate disodium-enhanced MR imaging. RSNA 97th Scientific Assembly and Annual Meeting).この二つの成果を組み合わせることによって局所的な肝予備能をMR画像から推定することが可能となり,肝病変に対する最適な治療方針の決定や術後肝不全の回避におおいに役立つことが予想される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り平成23年度の達成目標として課題1)MR信号とICG検査値の関連,課題2)肝区域と血管支配についてそれぞれ国際的な学術誌に成果を報告した.さらに次年度以降の達成目標としていた課題3)局所肝予備能評価,および課題4)システム試作と評価についても一定の成果をあげており,試作したシステムを用いた前向き臨床試験を当該施設の倫理委員会に申請中である.このため,本研究の現在までの達成度は当初の計画以上に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,課題3)局所肝予備能評価,および課題4)システム試作と評価について研究を進める.課題3)については本研究成果の応用が最も期待される領域である肝切除術後の症例について重点的に解析を進める.具体的には肝切除術前にgadoxetate disodium造影MRIとICG負荷試験を行った症例を後ろ向きに解析し,造影MRIから求められる部分肝予備能の指標と術後肝障害の程度との関連を明らかにする.あわせて課題4)について肝切除術や肝動脈化学塞栓術などの症例を対象として前向き臨床試験を進める.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため,次年度使用額が発生した.次年度使用額を含む次年度研究費は,システム開発に必要な開発環境の整備ならびに維持・管理,画像データの保存に必要な備品の購入,大規模な画像解析を行うための並列処理システムの構築ならびに維持・管理,国際的な学術誌に発表するための校正費用,データベース管理・画像管理における作業補助にあたる大学院生の雇用費用などへの使用を計画している.
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