前年度までに本研究課題の一環として開発した,肝細胞特異性 MR 造影剤(gadoxetate disodium)を用いた定量的肝機能評価法である hepatocellular uptake index (HUI),肝血流動態・機能を定量評価可能な input-corrected non-linear 2-compartment model (IC-NL-2CM) 解析法,肝細胞癌に対する肝動脈化学塞栓療法における腫瘍栄養血管の同定ならびに灌流領域の推定法を発展させ,肝切除術後肝不全を肝合成能と肝代謝能の両面から予測可能な新手法を考案した.本手法は,肝切除術前に施行された gadoxetate disodium 造影 MRI 肝細胞造影相画像から得られる予定残肝の体積および HUI を説明変数とした単純ベイズ分類器によって International Study Group of Liver Surgery (ISGLS) の定める肝切除術後の肝不全の発生リスクを求めるものであり,特殊な撮像法を用いること無く日常臨床において施行することが可能である.また,本法の有用性を 101 例の肝切除術後患者を対象に検討したところ,インドシアニングリーン負荷試験と肝切除率から決定される従来より採用されている標準的な肝切除の切除範囲決定法とほぼ同等の肝切除術後肝不全の予測能を有しており,今後の臨床応用と発展が期待される.
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