研究課題/領域番号 |
23791406
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
堺 俊博 浜松医科大学, 学内共同利用施設等, 研究員 (40585098)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ミトコンドリア膜電位 / イメージングプローブ / 脂溶性カチオン / アポトーシス / 心筋 |
研究概要 |
In vivoにてミトコンドリア膜電位を評価することを目的として、新規イメージングプローブの開発を行った。まず初めに、脂溶性カチオン構造を有する4-[125I]iodobenzyl triphenyl phosphonium ([125I]ITPP) の合成を行った。Iodobenzyl alcoholを出発原料として用い、4ステップの過程を経て、放射化学的収率61%、放射化学的純度99%以上で、目的化合物である[125I]ITPPを得た。次いで、本薬剤の生理食塩水への溶解性や血漿中での安定性を確認した。引き続き、本薬剤(37 kBq)をddY正常マウス(♂,6w)の尾静脈に投与し、投与24時間後までの各臓器採取による[125I]ITPPの生体内分布について検討した。その結果、ミトコンドリア膜電位の高い心臓において、投与2分後から24時間後まで約3.6 %ID/gと高い取り込みを維持した。さらに、同じくddYマウスに[125I]ITPP(10 MBq)を投与し、同一個体における経時的SPECT/CT撮像を行った。その結果、所期の通り、本薬剤が膜電位差の大きな心筋に高い集積性を示すとともに、投与24時間後において明瞭な心筋SPECT画像を得ることができた。しかし、肝臓や腎臓といった非標的臓器からのクリアランスを向上させることや、投与後の測定に要する時間を短縮することが次の課題とされた。現在、非標的臓器からのクリアランス向上を目的として、薬剤の脂溶性を低減させたITPP誘導体を考案している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初めに、[125I]ITPPを合成するにあたり、脂溶性カチオン構造を有する化合物を対象としたスズ-ヨウ素交換反応によってI-125標識を行うと、構造上の問題から反応が容易に進行しなかった。そこで、代替合成経路として、あらかじめスズ-ヨウ素交換反応によって、 I-125による放射性核種標識した後、triphenyl phosphineと反応させるという手法を考案した。この結果、[125I]ITPPを放射化学的収率61%、放射化学的純度99%以上で合成することができた。また、本薬剤の生理食塩水への溶解性や血漿中での安定性を確認した後、当初平成24年度に予定していた[125I]ITPPについてのマウス体内分布や、同一個体を用いた経時的なSPECT/CT撮像実験まで達成することができた。その結果、本薬剤が膜電位差の大きな心筋に高い集積性を示すことや、投与24時間後に明瞭な心筋SPECT画像を得られるといった有用な知見を得ることができた。これらの成果から、肝臓や腎臓といった非標的臓器からのクリアランスを向上させ、投与後の測定に要する時間を短縮する必要性が考えられた。以上の通り、初期の計画通りに研究が進展し、現在はさらなる問題点を精査する段階に至っているという観点から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究において、[125I]ITPPが、マウスを用いる生体内分布の結果や、投与24時間後のSPECT/CT撮像の結果から、膜電位差の大きな心筋に高い集積性を示すという有用な知見を得た。これらは、ミトコンドリア膜電位を標的とした細胞のアポトーシス検出を想定した本薬剤が、その集積機序を利用した心筋イメージング剤としても利用できる可能性を示している。現在、ヨウ素製剤として汎用されている心筋血流イメージング剤は無く、濃縮ウランの核分裂生成物から分離されるMo-99を利用して調製されるTc-99m製剤が手である。ヨウ素製剤はTc-99m製剤に比べ、常に安定して供給できる利点がある。そこで、ヨウ素製剤の臨床適応を目指し、さらなる改善を行う。具体的には現在、非標的臓器からのクリアランスを向上させ、投与後の測定に要する時間を短縮することを目標に、新たに2種の[125I]ITPP誘導体を考案している。これらの安定的合成や標識効率、純度が得られ、[125I]ITPPよりも短時間で、明瞭なSPECT/CT心筋イメージング撮像図を得ることができれば、新たな心筋イメージング薬剤として臨床での応用が期待できる。その際の比較対象として、現在、臨床で汎用されている[99mTc]MIBIの体内分布を同条件で行い、[125I]ITPPおよびその誘導体の結果と比較検討する。さらに、集積機序の確認実験として、ミトコンドリア膜電位の異なる数種の培養細胞を用いたin vitroでの取り込み実験を行う。なお、使用した培養細胞は、ミトコンドリア膜電位検出試薬であるJC-1を用いたフローサイトメトリーに付し、それらの結果の関連性を考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度も引き続き、新規化合物の合成、RIを用いた評価、分子生物学的検討、実験動物での評価を行う。そのため、目的化合物である標識プローブの合成および構造確認に際し、必須となる試薬や溶媒などの化学薬品、放射性化合物、ガラス器具、HPLC用カラム等の消耗品購入金額として、133万円を考えている。また、本研究の推進に際し、分子イメージング学会、核医学会での成果報告、意見交換を目的とした旅費として、20万円を、さらに、論文作成および投稿料として15万円を計上している。
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