In vivoにてミトコンドリア膜電位を評価することを目的として、新規イメージングプローブの開発を行った。昨年度の研究において、ミトコンドリア膜電位を標的とした細胞のアポトーシス検出を想定し、調製した[^<125>I]ITPPが、マウスを用いる生体内分布の結果や、投与24時間後のSPECT/CT撮像の結果から、膜電位差の大きな心筋に高い集積性を示すという有用な知見を得た。これは、本薬剤がミトコンドリア膜電位依存的に取り込まれるといった集積性を利用した心筋イメージング剤としても利用できる可能性を示していた。そこで、本年度は、肝臓や腎臓等、排泄系臓器からのクリアランスを改善し、投与後の測定に要する時間を短縮することを目標に、新たな[^<125>I]ITPP類似化合物として、[^<125>I]IDPPと[^<125>I]IMPPの2種の薬剤を開発した。これらは安定的合成法や標識効率、純度で得られ、[^<125>I]ITPPよりも短時間で、明瞭なSPECT/CT心筋イメージング撮像図を得ることができた。そこで、新たな心筋イメージング薬剤として臨床での応用が期待できるため、現在臨床で汎用されている [^<99m>Tc]MIBIの体内分布を同条件で行い、2種の薬剤の結果と比較検討した。その結果、2種の薬剤はいずれも[^<99m>Tc]MIBIと同様に優れた薬剤となる可能性が示された。さらに、集積機序の確認として、各種in vitro取り込み実験を行い、これらがミトコンドリア膜電位依存的に集積する薬剤であることを示した。以上の結果から、ミトコンドリア膜電位依存的に集積する薬剤として、脂溶性カチオン構造を有した低分子ヨウ素製剤;[^<125>I]IDPPと[^<125>I]IMPPの開発に成功した。これらの構造は、非常に簡素で合成も簡便であるため、部分的な構造の改良や放射性核種の変更も容易であるといった利点があり、今後臨床への応用が期待できる。
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