研究課題
日本では,平成18年に強度変調放射線治療(IMRT)が先進医療として採択され,その実績に基づき,平成20年4月からは前立腺・頭頚部・脳に限定して保険収載された.平成22年4月からはIMRTの保険適用が限局性の固形悪性腫瘍に拡大されたことに伴い,現在では様々な部位に対して施行されている.呼吸性移動を伴う腫瘍に対してIMRTを施行する場合,マルチリーフコリメータ―(MLC)の移動と臓器の呼吸性移動との相互作用により,意図せぬ線量分布が生成されることが知られている.本研究の目的は,呼吸性移動を伴う腫瘍に対してIMRTを施行する場合,どの程度の動態下であれば安全に施行できるのかを明らかにすることである.本研究では,まず,呼吸周期を一定とし,呼吸性移動量を変数として臨床で使用した複数のIMRTプランを用いて照射した線量分布を非動態下の線量分布と比較した.その結果,呼吸性移動量が5mm未満の場合では,非動態下における線量分布とほぼ一致していたが,5mm以上では両者の一致率が著しく低下した.さらに,息止め下であっても,5mm以上のベースラインドリフトが見られた場合,非動態下に対する動態下の線量分布の一致率は大きく低下することを明らかにした.最終年度には強度変調回転照射でも同実験を行い,10mm以上の動体下では,非動態下における線量分布と比較して,一致率が大きく低下することがわかった.しかも,非一致箇所はランダムに出現するわけではなく,システマティックに出現することがわかった.本検討結果より,分割回数が多くても,非一致率は改善しないことが示唆された.
すべて 2013
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Journal of Applied Clinical Medical Physics
巻: 14 ページ: 43-51
10.1120/jacmp.v14i5.4252.