研究課題
肝臓体幹部定位放射線治療における至適な金マーカーを検討した。金球マーカーとコイルマーカー(Visicoil)の2種を対象とした。前者は直径2mmの球形で3次元位置把握のためには3個留置が必要となること、刺入の際にスポンゼルでの止血操作が必要であることが欠点で、利点としては回転移動への対応がしやすいことが挙げられた。後者は1個の留置で3次元位置の把握が可能であるが、回転移動に弱い点が欠点と考えられた。刺入操作の煩雑さや海外での実績を考慮し、最終的にvisicoilをマーカーとして選定した。直径や長さに関してはファントム検討により、直径0.75mm、長さ10mmのものを選択した。肝臓定位照射の2例に対し、visicoil刺入を行い動態を観察した。動体追尾放射線治療実施に向けた治療フローの確立を行った。このフローには治療計画用CT撮像プロトコル、マーカー・腫瘍位置の相対誤差を考慮したPTVマージンの設定、治療中の透視条件設定が含まれた。問題となったのは実治療時におけるマーカー回転の影響である。当初は治療計画時に息止めCTを用いたが、実治療時と比べて大きな回転誤差を生じるために、マーカー誤認識を来す結果となった。この問題には自由呼吸下4次元CTの呼気相を治療計画に用いることで解決した。治療中のマーカー透視条件に関しては肝臓のような実質臓器では肺と異なる条件が必要となることは事前に予測されたが、それ以外にvisicoil認識アルゴリズムに合わせた条件の設定が必要となった。以上の検討から肝臓に対する動体追尾治療フローが概ね完成したと考え、平成25年3月に肝臓転移に対し動体追尾定位放射線治療を実施した。従来の治療法と比較して正常肝の平均線量が15.2Gyから12.8Gyへと低減され、腫瘍線量は同レベルを維持できることが事前シミュレーションで確認できた。実際の治療は特に支障なく完遂された。
2: おおむね順調に進展している
金マーカー刺入と動体追尾放射線治療の実現まで完了することができ、順調と考えられる。
呼吸性移動の管理・評価を引き続き行う予定である。金マーカーの留置症例において、四次元CTや2方向同時のX線透視により三次元的な肝腫瘍の呼吸性移動を評価したいと考えている。照射方法の最適化に関しては、動体追尾法の適応をさらに進める。
肝臓に対する体幹部定位放射線治療はまだ一般的に確立した手法ではないため、国内外の学会での情報収集が必要である。このための旅費が多く必要となる見込みである。これ以外にデータ集積および解析用の消耗品に研究費を用いる予定である。
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