研究課題
本応募課題では、腫瘍の悪性度や治療抵抗性と密接に関係する腫瘍内低酸素領域(低酸素誘導因子[Hypoxia-inducible factor-1; HIF-1]存在領域)を体外から非侵襲的に検出するための放射性分子プローブ開発を目的とする。具体的には、HIF-1のαサブユニットの酸素依存的分解メカニズムに基づき、低酸素領域でのみ安定化され、それ以外の組織では分解されるペプチドプローブを開発することで、HIF-1存在低酸素領域への選択的プローブ送達と非標的臓器や血中からの速やかな放射能クリアランスの達成を目指す。昨年度の検討により、HIF-1α配列中の564番目のプロリン残基を含むアミノ酸配列に、膜透過配列としてL-リジン9残基を導入して作製したKOP30にHIF-1存在低酸素領域としての可能性を見出した。しかしKOP30は腫瘍血液比が低かったため、本年度は膜透過配列を種々変更して体内動態の改善を試みた。ポリアルギニン、MAPなど5種類以上の膜透過配列を検討し、D-リジン9残基が最も効果的であることを見出した。膜透過配列としてD-リジンを有するプローブDKOP30はプロテアソーム依存的に分解を受け、低酸素培養細胞に対して通常酸素培養細胞の4倍高い放射能集積を認めた。担がんマウスを用いた体内分布実験では、腫瘍血液比は投与2時間後で1を上回り、腫瘍イメージングに成功した。またDKOP30の腫瘍集積はHIF-1転写活性と有意な正の相関を示し、さらに腫瘍内のDKOP30の局在はHIF-1α免疫染色陽性部位と一致した。DKOP30に含まれるプロリンをアラニンに置換したmDKOPではプロテアソーム依存的な分解を認めず、その腫瘍集積もHIF-1転写活性とは相関しなかった。これらの結果からDKOP30のHIF-1存在低酸素領域イメージングプローブとしての可能性が示された。
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Molecular Imaging and Biology
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