研究課題/領域番号 |
23791419
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高階 正彰 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (10392010)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 放射化 / モンテカルロシミュレーション / 核反応模型 |
研究概要 |
反対称化分子動力学(AMD)の開発者よりAMD計算コードを入手し、本学の大型計算機で並列処理などができるように準備を行った。また、入手した計算コードは、2つの原子核の衝突ダイナミクスの計算までを行うものであり、反応断面積の計算まではできなかったため、断面積の計算を行う補助プログラムを作成した。まずはテスト計算として、12C(p,x)11C, 12C(p,x)10Be, 12C(p,x)7Be 反応の、エネルギーE=0-200MeV領域の励起関数を計算し、実験データや、モンテカルロシミュレーションコードPHITSの中に組み込まれている核内カスケード模型(INC)や量子分子動力学(QMD)の結果と比較をしているところである。これと並行して、放射化の具体的な例として、PHITSを用いて陽子線治療中に患者体内の放射化のシミュレーション計算を行い、患者体内でどのような放射化核種がどれくらい生成されるのかについて調べた。また陽子線治療施設の装置などの放射化を調べるため、交流のある米国・インディアナ大学・陽子線治療施設のビームラインの情報を入手し、陽子線照射装置のモデル化を行ってPHITSで計算できるようにした。PHITSでは核反応過程を、INC、QMDを用いて計算しているが、INCやQMDの結果を調べてみると、反応過程によっては全く実験データを再現しないものもあることが分かった。このことはPHITSによる計算結果がどれくらいの精度を持っているかということにかかわってくる。今後はAMDを組み込んだ場合に、どれくらい精度が変わるかに関して調べる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
入手した計算コードと使用している大型計算機の相性が良くなく、並列化したプロセスのうちいくつかが途中で止まるという不具合が起きている。原因や解決法を探したが結局解決していない。計算を遂行することは可能であるが、計算速度は遅い。
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今後の研究の推進方策 |
まず、実験データが存在する炭素、アルミ、鉄、鉛などの原子核をターゲットとし、入射エネルギーをEp=113, 256 MeV とした(p,n)反応における、放出中性子のスペクトルをAMDによって計算し、実験データと比較する。精度が悪い場合には、相互作用パラメータなどを最適化することによって精度向上を目指す。また、中性子、陽子を入射粒子、ヘリウム、窒素、酸素、ケイ素などを標的核とし、エネルギーを Ep=20 - 300MeV とした核反応における放射核種の生成断面積を計算し、計算結果の精度を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
前述の通り、AMD計算の結果の精度がよくない場合には、相互作用パラメータなどを変化させながら最適化することが必要である。この場合、AMD計算コードの開発者との綿密なやりとりが必要となるため、議論のための出張旅費が必要である。また、国内外の学会に出席して研究成果発表、粒子線治療におけるシミュレーション研究の動向調査、本研究に関する議論を行うための出張旅費が必要である。
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