研究課題/領域番号 |
23791419
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高階 正彰 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教(常勤) (10392010)
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キーワード | 核反応モデル / 放射化 / 粒子線治療 |
研究概要 |
反対称化分子動力学(AMD)のテスト計算を終えたため、次にその精度を検証するための計算を行った。AMDで記述することができるのは、動力学的な反応過程のみであるため、反応後の破砕片の蒸発過程を計算するコード(GEM)を開発した。このコードとAMDのコードを用い、炭素、酸素、カルシウムの原子核を標的核とした、治療エネルギー領域(Ep=200MeV以下)の陽子入射反応を計算し、量子分子動力学(QMD)、および実験データと比較した。その結果、陽子入射反応の場合は、AMDがQMDと比べて若干良いところもあるものの、全体として両者の精度はほぼ同じであるという結果が得られた。この結果は、大阪大学医学部保健学科4回生学生の卒業論文としてまとめられた。 また、平行してモンテカルロシミュレーションコードPHITSを使用して、陽子線を照射した際の患者の放射化のシミュレーションを行い、放射化核種の生成断面積と患者の放射化シミュレーション結果との関係を調べている。PHITSではQMDがよく用いられるが、AMDを使用した場合に結果がどのように変わるかを明らかにし、モデル依存性を調べることを目標とする。この研究では、副産物的に、患者の放射化により医療スタッフがどれくらい被ばくしているかを見積もることができ、また照射される物質の組成によって放射能がどれくらい変化するかなどを計算できるため、その研究も行い、現在論文を執筆中である。 今後は粒子線治療に使用するもう一つの主要な原子核である炭素を入射粒子とした計算を行うため、現在その準備を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
患者の放射化による医療従事者の被ばくの見積もりに関する研究を行い、論文を執筆しており、本来の計画から少し外れているため、本来の研究の内容に関しては計画から少し遅れている。また、AMDのコードのエラーも解決していないため、予想以上に計算時間がかかり、遅れる原因となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、大阪大学大学院学生と共に炭素入射反応をAMDで計算し、これまでと同様にQMDや実験データと比較する。予想としては、炭素線入射の場合においてAMDの利点が生かされるので、QMDより良い結果が見いだせればその時点で論文を執筆する。 患者の放射化による医療従事者の被ばくに関して、論文を投稿する。 他の適用例として、粒子線治療装置の放射化や中性子発生をにらみ、より重い元素(銅、鉛、鉄)を標的とした場合についても調べる。また、アメリカ・インディアナ大学の陽子線治療装置をモデル化し、その放射化、中性子発生のシミュレーションへ適用して研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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