研究課題/領域番号 |
23791423
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
東原 大樹 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (90423186)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | インターベンショナルラジオロジー (IVR) |
研究概要 |
高分子多糖類を用いた新たな塞栓物質の開発と薬剤溶出能の検討の初年度として、まず高分子多糖類の一種であるアルギン酸ナトリウムを塩化カルシウムと架橋させることで、ゲル化させ、球状のアルギン酸ビーズ(以下、ビーズ)を作成した。濃度の異なるビーズを作成し、ビーズの物性(弾性特性)を定量的に評価することで、ビーズの最適化を図った。 ビーズを1%,2%,3%濃度の 3 種類を作成した。顕微鏡下で各10個のビーズ直径を計測し、ビーズ粒子 1 個毎の弾性特性を圧縮試により荷重と変位の関係を測定し、定量評価した。 次に各種類の1個の粒子を配置し、初期直径の 80%付近まで圧縮を行い、圧縮試験によって得られた荷重―変位関係を用いて、ビーズ固有の弾性の値を示す縦弾性係数(ヤング率)を推定した。 作成されたビーズは平滑で球状であった。圧縮試験のビーズ初期直径は1%ビーズ(Mean ±SD(Median) mm):2.35±0.13(2.38) mm、2%ビーズ:2.09±0.21(2.10)mm、3%ビーズ:2.42±0.20(2.50)mmであった。いずれも荷重が増加すると変位は非線形的に増加し、圧縮試験後に球形はつぶされ、円盤状となった。各ビーズのヤング率は、1%ビーズ:(Mean ±SD(Median)Pa):5545.1±541.8(5451.1)Pa、2%ビーズ:8954.4±663.7(8887.3)Pa、3%ビーズ:9526.0±725.9(9426.6)Paであった。1%ビーズは他の 2つのタイプのビーズと比較して有意にヤング率が低く、2%ビーズと3%ビーズのヤング率には有意差は無かった。今回の結論としては現在使用されている球状塞栓物質のヤング率は2%、3%ビーズのヤング率は先行研究論文を参照すると、既存の球状塞栓物質よりも若干軟らかく、1%ビーズは有意に軟らかいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アルギン酸ゲルを用いた細経型球状ビーズの作成を行うにあたり、比較的大きなサイズ(2mm程度)のビーズを用いて粒子の物性を計測することで、ビーズ作成の最適な組成を検討する必要があった。本年度での検討で、細経型球状ビーズの最適な組成として2 w/v %アルギン酸ナトリウムと、400mMol/L塩化ナトリウムを使用するのがよいと結論づけた。現段階で、インクジェットノズルを用いた滴下法による細経型球状ビーズの作成に既に取り掛かっており、本年度の達成目標であった細経ビーズ作成・確認を行う予定である。現段階では研究計画に若干の遅れが生じているものの、遂行可能であると考えられます。
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今後の研究の推進方策 |
前記の「現在までの達成度」にて報告の通り、細経型の球状ビーズの作成をまず行う。並行して、作成されたビーズの保存方法を現在検討しており、フリーズドライ法などによる凍結乾燥が可能かを現在検討中である。また、ビーズの抗がん剤の薬剤吸収および放出などの薬物動態の研究に取り組む。具体的には塩酸エピルビシンをアルギン酸ナトリウムに溶解させて、比較的大きなビーズの作成をまず行い、その薬剤除放・放出能を計測する。 十分な時間をかけて薬剤除放・放出が可能である場合には、次の段階として抗がん剤を吸収させた細経型球状ビーズを作成して、腫瘍モデルの動物(現時点では肝腫瘍モデルとして、肝内にVx2を埋めこんだウサギなど)を用いた実験を行い、腫瘍壊死効果、体内の薬剤動態および肝内の障害度などの検討を行う。 薬剤除放能が予想よりも極めて低いあるいは、非常に短期間で薬剤が溶出されるような場合には、薬剤を吸収させていない球状ビーズを用いて、動物(この場合には豚あるいは犬など)の肝・腎の血管内に注入して、ビーズの到達距離や血管内の変形・周囲組織の炎症反応などの球状ビーズの生体内の挙動を検討する予定としている。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は主に球状ビーズの薬剤吸収・薬剤除放能を中心に検討する予定であり、その実験に必要となる器具・材料・情報収集にかかる経費が研究費として必要となる。また、当施設では薬剤除放を測定することが困難な可能性があり、この場合しかるべき機関に薬剤除放能の計測を依頼するための研究費が必要となることも考えられる。
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