研究課題/領域番号 |
23791424
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
西村 英輝 神戸大学, 医学部附属病院, 特命講師 (80444610)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | Spring-8 / 格子状照射 / マイクロビーム / 放射線治療 / 放射光 / 正常組織耐容線量 |
研究概要 |
放射光を用いた微小グリッド高精細格子状照射とは、従来の放射線治療のようにターゲットに対して均一な照射を行わず、ターゲット内を格子状に照射を行う照射法である。通常のエックス線による格子照射は格子幅が数センチと大きく、周囲正常組織に対する障害が問題となる。また、抗腫瘍効果に関しても格子幅が大きいために非照射部位での抗腫瘍効果が充分期待できない。通常のX線は指向性が高くなく、細かいグリッド状のマイクロビームを形成することが困難であったが、本研究ではSPring-8から供給される放射光を用いてグリッド幅25um~数mmの高精細格子状照射を行い、それぞれの格子幅における抗腫瘍効果・正常組織反応を観察することにより最適な照射条件を探索するものである。本年度は、マウスに対して放射光を用いた微小グリッド高精細格子状照射を行い正常組織耐容線量の評価を行った。SPring-8のBL28B2第2光学ハッチから供給される放射光を用いて照射を行った。スリット幅は25-50um、peak部位で100Gyから600Gyまでの照射を行った。脳・脊髄に対して照射を行い、照射後1週および4週時点でマウスをサクリファイし、それぞれの臓器における照射後の変化を病理学的に検討を行った。通常照射を行ったマウスにおいては広範囲に組織の欠損やDNA損傷が確認されたが、格子状照射を行ったマウスにおいては、スリット状に細胞の脱落やDNA損傷が見られるが組織自体の脱落はなく、グリッド照射に対する正常組織の耐容線量が高いことが示唆された。脊髄に対する照射を行ったマウスに対して、Ladder climb試験やinclined plane試験による行動試験を行った。これらの結果からは、通常照射とグリッド照射による差を認めることが出来なかった。この原因は不明であるが、異なる線量・グリッド幅を用いて平成24年度も更なる研究を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスに対する照射後の病理組織の検討は予定通り施行することができた。しかし、行動試験に関しては予想と異なる結果が得られ、追試験が必要となった。Spring-8でのマシンタイムは無制限ではなく、追試験・再試験に要するマシンタイムの再申請が必要となった。本年度に施行できなかった追試験は平成24年度に実施予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究計画から追試が必要となった行動試験に関しては平成24年度に施行予定である。その他の研究に関しては当初の研究計画に則り施行する予定である。Spring-8でのマシンタイム申請を行い、平成24年度前期のマシンタイムは既に確保しており、予定通り研究を遂行する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画に則り、平成24年度の研究費を使用する予定である。平成23年度に429円の次年度使用額があり、平成24年度の研究費とあわせて使用予定である。平成24年度に追試験を行う行動試験に関しても、当初予定された平成24年度の研究費から拠出可能と考える。
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