癌の根治的治療における放射線治療の役割は近年飛躍的に高まっている。それに伴う技術的な進歩も目覚ましく、安全に高線量を照射することが可能となりつつある。加えて化学療法を中心とした併用療法により、これまで治癒し得なかった進行癌に対する治療成績も向上している。しかし、それに対して早期喉頭癌のように従来から放射線治療で根治が図られてきた腫瘍の治療成績はプラト-に達しており、10%前後は放射線抵抗性であると考ええられている。同様なことは前立腺癌や子宮頚癌などの線放射治療が積極的に行われる癌に対しても言える。この現状を打開し更なる治療成績の向上を図るには単に線量の増加を図るだけでなく、腫瘍の生物学的な側面からの検討が非常に重要である。そのような背景から我々は炎症や発癌に広く関与するとされるNuclear factor-κB(NF-κB)に着目し、既に早期喉頭癌において研究を行ってきた。今回はそれをさらに発展させる形で幅広い癌腫においてNF-κB活性化と放射線抵抗性の関係を調査する。同時に臨床応用に本向けた第一段階として細胞(In vivo)、動物レベル(In vitro)での実験を行うというのが本研究の内容である。 初年度は、A. 複数の癌腫におけるNF-κBの放射線抵抗性予測因子としての有効性の検討、B. 再発腫瘍におけるNF-κBの活性化増強についての検討、の2項目が予定されていた。我々は計画書の予定に、当院で積極的に治療が行われている頭頸部癌領域で放射線単独で治療されることも多い下咽頭癌を追加した。これらについて、免疫染色の結果が出次第、解析を行なってゆく。 2年間の間で、この研究計画に出来るだけ基づいて順次研究を施行したが結果、実績等が出るにはもう少し期間を要する。
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