研究課題
T1ρ計算画像は関節軟骨変性の初期に生じるプロテオグリカン(PG)の減少を鋭敏に検出し、評価可能な撮像法であることが知られていたが、変形性膝関節症(OA)や関節リウマチ(RA)を有する患者を対象とした研究は十分に行われてなかった。変形性膝関節症を有する患者を対象として、画像所見と病理学的所見の解析を行った。具体的には、人工関節置換術前に撮像したT1ρ値計算画像の定量的評価と、手術終了後に取得された関節軟骨の切除標本より、PG含有量を免疫染色による半定量的評価を対比した。OAやRAにおいては、重症度進行に伴い浅層及び深層の平均T1ρ値は有意に上昇した。また、PG含有量は減少しており、有意な負の相関を認めた。OAとRAの比較では、OAは軽度変性では浅層のみ平均T1ρ値が上昇し、重症度進行に伴い、浅層に加えて深層まで平均T1ρ値が有意に増加した。RAは重症度が進行すると浅層から深層まで全体的にT1ρ値が上昇する傾向があった。これは疾患により生じる関節軟骨変性の特徴を捉えていると考えた。変形性膝関節症の早期変性の検出能に関して、T1ρ値計算画像と既にその有用性が報告されているT2値計算画像の対比を行った。切除標本から重症度マップを作成し、領域毎に重症度スコア、平均T1ρ値と平均T2値を算出し、それぞれ対比した。重症度進行に伴い平均T1ρ値およびT2値は有意に上昇したが、正常部と早期OAの鑑別能に関しては、T1ρ値計算画像はT2値計算画像よりも優れた診断能を有していた。これはOA初期に生じうる生物学的変化、すなわちPGの減少は、T2値計算画像よりもT1ρ値計算画像が鋭敏に検出できるということが証明された
すべて 2013
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European Journal of Radiology
巻: 82 ページ: e192-e198
10.1016/j.ejrad.2012.11.031