研究課題/領域番号 |
23791438
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
下權谷 祐児 兵庫県立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30552575)
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キーワード | 脳動脈瘤 / 血管内治療 / ステント / 術前評価 / 血流 / 血行力学 / 計算流体力学 |
研究概要 |
昨年度までに構築した,モデル作成から血流評価までの一連の解析手法を応用し,ストラット(ステントを構成するワイヤ状の骨格要素)の本数を変数として,親血管と瘤との境界面における流入流量を定常流条件のもとで評価した.モデル形状は,血管の湾曲部に発生した瘤(sidewallタイプ)を対象とした.解析の結果,今回の血管形状およびステント形状のもとでは,ストラット本数の増加が必ずしも血流阻害効果の向上につながらないこと,また瘤の形成角度によってはそれが特異的に強調される場合があることが明らかとなった. 続いて,近年欧米での利用が広がりつつあるflow diversion stentと呼ばれるタイプのステントについて,3次元形状モデルの作成を行った.flow diversion stentの特徴は,従来のステントよりも細いストラットが密に編まれている点であり,流体計算の観点では計算格子数(計算時間)の大幅な増加が問題となる.そこで計算時間の見積りを行うとともに,その対策について検討した.また,ステント留置の対象形状を医用画像ベースの実症例脳動脈瘤へと拡張するために,ソフトウェアを用いたステントの変形解析に着手した.さらに,定常流から拍動流への拡張や,流入条件の違いが結果に及ぼす影響など,より現実に近い条件下でステント留置術の血流解析を実現するための基礎的検討を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
興味深い新たな知見がこれまでに得られていること,現実に近い条件下でステント留置術の血流解析を実現するための検討が着実に進められていること,そして本研究課題の最終的な目的である脳動脈瘤実症例モデルへの応用に着手していることから,上記のような達成度評価とした.
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今後の研究の推進方策 |
脳動脈瘤の実症例モデルに対するステント留置術の力学評価シミュレーションを行うことで,本研究の手法の有用性を実証する.実際の治療において複数のステント候補の中からいずれかを選択するような状況を想定し,その判断材料となるような相対評価が,本研究の手法により可能であることを示すのが目的である.ここではステントの最適設計は計画していない.そのため,評価結果の絶対量そのものを議論するのではなく,評価結果の相対値に注目して手法の有用性を示すものとする.
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次年度の研究費の使用計画 |
多数の実症例モデルを対象としたシミュレーションを行うため,データ保存用ディスクの購入を計画している.また研究を効率的に進めるため,形状モデリング用ソフトウェアの購入も計画している.旅費に関しては,研究成果発表と情報収集,ならびに研究協力者との研究打合せに使用する計画である.また,研究成果を学術論文として公表するための諸経費と学会参加費にも研究費を使用する予定である.
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