研究課題/領域番号 |
23791444
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
細川 崇洋 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (20383854)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 周産期出血 |
研究概要 |
今年度はホルモン療法にて偽妊娠状態とした豚2匹を用いて、子宮動脈を塞栓物質NBCAを用いて塞栓術を行った。二年度以降の本実験を行う前の予備実験として、対象となる豚の検討、NBCAの投与濃度の決定、病理標本の作製の手順の決定、子宮組織切片の染色方法の決定を行った。臨床現場では妊娠子宮が対象となるため、対象となる豚もホルモン療法で偽妊娠状態とすることが必要であった。また、豚も子宮動脈の太さに個体差が見られた。このため、可能であれば4匹程度の豚を用いて、異なる太さの子宮動脈を対象として本実験を行う必要がある。NBCAの投与濃度は、通常の臨床現場は8倍に薄めて用いるが、その濃度で病理検体での観察が可能かどうかを調べ、観察可能であることを確認した。臨床の現場に即し、本実験は8倍に薄めた濃度と中心に使用し、病理標本を作成、検討する。病理標本の作製のため、子宮の切片の切断方向の決定、切片標本の厚さの決定を行った。切断方向は、子宮長軸に対して垂直に切断し、観察を行った。これにより損傷を受けた子宮内膜の深さや範囲の検討が可能であった。切片標本の厚さは10μmで観察する。血管内の塞栓物質は、一部が切片作成の処理中に剥離してしまうことが判明したため、作成した連続3切片で観察し、血管内の塞栓物質の有無を判断することとした。病理標本の染色方法は、H.E染色、EVG染色、オイルレッド染色の23つを中心に行った。子宮内膜の損傷の程度はH.E染色で評価が可能であった。血管内の塞栓物質の検討では、血管壁が評価できるEGF染色で血管を同定し、その内部の塞栓物質の有無をH.E染色で評価する方法が適していた。オイルレッド染色では、血管内部の塞栓物質が見やすくなった。今回の予備実験を通して、本実験を行う際の、処置の方法、評価方法の決定を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本実験を行う前の予備実験として、対象となる豚の検討、塞栓物質の濃度や、病理標本の作製手順、染色方法の決定を行った。対象となる豚は、臨床現場では妊娠子宮が対象となることを考えると、ホルモン療法で偽妊娠状態とすることが必要と考えられた。しかし、豚も、子宮動脈の太さの個体差が見られたため、可能であれば4匹程度の豚を用いて、異なる太さの子宮動脈を対象として本実験を行う必要があると考えられた。NBCAの投与濃度は、通常の臨床現場は8倍に薄めて用いるが、その濃度で病理検体での観察が可能かどうかを調べたが、観察可能であった。臨床の現場に即し、本実験は8倍に薄めた濃度と中心に使用し、病理標本を検討する。病理標本の作製のため、子宮の切片の切断方向の決定、切片標本の厚さの決定を行った。切断方向は、子宮長軸に対して垂直に切断し、観察を行った。これにより損傷を受けた子宮内膜の深さや範囲の検討が可能であった。切片標本の厚さは10μmで観察する。血管内の塞栓物質は、一部が切片作成の処理中に剥離してしまうことが判明したため、作成した連続3切片で観察し、血管内の塞栓物質の有無を判断することとした。病理標本の染色方法は、H.E染色、EGF染色の2つを中心に行った。子宮内膜の損傷の程度はH.E染色で評価が可能であった。血管内の塞栓物質の検討では、血管壁が評価できるEGF染色で血管を同定し、その内部の塞栓物質の有無をH.E染色で評価する方法が適していた。また、オイルレッド染色では血管内部の塞栓物質が見やすなった。本実験を行う際の、処置の方法、評価方法を決定するうえで、今回の予備実験は有用であった。
|
今後の研究の推進方策 |
周産期出血は依然、母子の生命を脅かす病態である。子宮摘出術が行われることが多いが、患者がDICの状態であることが多く治療を困難としている。現在、子宮摘出にかわる治療法として、子宮動脈からの塞栓術が試みられている。しかし、患者のDICの状態では塞栓物質であるゼラチンスポンジでは生体からの血栓効果が得られず、再出血を来し、子宮摘出術への移行などの再治療が必要となる例も多い。そのため、塞栓物質として生体の血栓効果に依存しないNBCAを用いて子宮動脈塞栓術が施行する症例も増えてきた。また、NBCAを用いて子宮動脈を塞栓後、再度妊娠した症例もあり、妊繁性の維持という点でもNBCAは有用な治療法である可能性がある。これはNBCA塞栓後に子宮動脈が再開通している可能性も示唆している。しかし、現在までNBCAを用いた子宮動脈塞栓後の、塞栓範囲と塞栓効果、子宮組織の障害の程度についての基礎研究はなされていない。今後は、ホルモン療法を行った偽妊娠豚を4匹を用い、臨床の現場に則し8倍に薄めた濃度の塞栓物質NBCAを用いて、子宮動脈を塞栓する予定である。その後、半数の豚は塞栓術後に子宮を摘出し、子宮動脈への塞栓物質の有無を検討する予定である。残り半数の豚は塞栓後3週間後に子宮動脈を再度造影し血管の開存性の有無を確認する予定である。こののちに子宮を摘出し、その塞栓物質の分布の範囲、子宮内膜への影響について病理学的検討を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
対象となる豚を4匹、また、ホルモン療法を行い、偽妊娠状態とする予定である。動物実験施設を利用し、豚の子宮動脈を塞栓物質を用いて塞栓する。塞栓術後の豚の処置については、半数は、塞栓術後にすぐに子宮摘出し、塞栓物質の分布を検討する。一方で慢性期に子宮動脈が再開通するかどうかを確認するため、残り半数の豚は動物実験棟にて3週間程度たったのちに、再度血管造影を行い子宮動脈の開存性の有無を確認する予定である。また、その後に子宮を摘出し、子宮内膜への影響を検討する。豚は全身麻酔下にして処置を行い、マイクロカテーテルを用いて子宮動脈を選択して処置を行う。塞栓物質はNBCAとリピオドールの混合物を用いて子宮動脈の左右両側の塞栓を行う。摘出子宮は、外子宮口から、双角子宮分岐部までを5等分して、それぞれの断面から連続して3切片をH.E染色、オイルレッド染色、EVG染色を行い病理学的検討を行う予定である。これらの染色を行い、子宮内膜組織の損傷の程度の評価、また、血管内の塞栓物質の有無を評価する。本年度の未使用額発生は、実験に使用した豚の費用が抑えられたため発生した。本年度未使用額は次年度の消耗品購入などに充てる予定である。
|