周産期出血は依然、母子の生命を脅かす病態である。子宮摘出術が行われることが多いが、周産期出血の病態では母体患者が出血傾向であり治療を困難としている。現在、子宮摘出にかわる治療法として、子宮動脈からの塞栓術が試みられているが、出血傾向の場合、塞栓物質であるゼラチンスポンジでは生体からの血栓効果が得られず、再出血を来し、子宮摘出術への移行など再治療が必要となる例が多い。そのため、塞栓物質として生体の血栓効果に依存しないNBCAを用いて子宮動脈塞栓術を施行する症例が増えてきた。また、NBCAを用いて子宮動脈を塞栓後に再度妊娠した症例もあり、妊繁性の維持という点でもNBCAを用いた子宮動脈塞栓術は有用な治療法である可能性がある。これはNBCAを用いた塞栓後に子宮動脈が再開通している可能性も示唆している。しかし、現在までNBCAを用いた子宮動脈塞栓後の、塞栓範囲と塞栓効果、子宮組織の障害の程度についての基礎研究はなされていない。 ホルモン療法を行った偽妊娠豚2匹の子宮動脈を、NBCAとリピオドールの混和液を用いて塞栓した。その後、塞栓直後に子宮を摘出し、NBCAの分布の範囲を検討した。NBCAとリピオドールは、病理切片であるH.E標本作成時に融解してしまい直接的に観察するのは難しかった。通常のX線撮影より、より分解能の高い軟X線を用いた場合、間接的にリピオドールを描出することができ、より分布範囲を明瞭に確認することが可能であった。 つぎに、ホルモン療法を行った偽妊娠豚2匹の子宮動脈を、NBCAとリピオドールの混和液を用いて塞栓し、その後、2週間飼育した。2週間後に、子宮動脈の血管造影を行い塞栓物質の残存範囲を2週間前の塞栓直後の塞栓範囲と比較した。その後、子宮を摘出し塞栓物質の分布範囲、子宮内膜への影響について病理学的に検討を行った。血管造影上では2週間の間では、子宮動脈内の血管内塞栓物質の残存の程度には変化はみられなかった。
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