研究課題/領域番号 |
23791445
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
深田 淳一 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (50338159)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 悪性膠芽腫 |
研究概要 |
悪性膠芽腫のセルラインとして、PTENとp53の変異の有無に着目して4種類を選択した。LN229(PTEN wt/p53 wt)LN18(PTEN wt/p53 mut)U87(PTEN mut/p53 wt)U251(PTEN mut/p53 mut)それぞれに線量の異なる単回照射(2Gy、4Gy、8Gy、16Gy)を行い生存曲線を作成した。高線量において生存率の低下が観察されたが、特に野生型であるLN229では、8Gyを超える高線量の照射において、低下が顕著であった。このことから、PTENとp53の変異の有無が細胞レベルの生存率に関与することが推測される。次に同一線量である16Gyにおける細胞生存率を算出するため、単回照射で用いた1回線量で複数回の照射を施行した(2Gy×8回/4Gy×4回/8Gy×2回/16Gy×1回)。分割照射の間隔はこれまでの報告から1日で行った。この結果、1回線量が高い照射スケジュール群で、細胞生存率が低いことが確認された。1回高線量による低分割照射が可能であれば、悪性膠芽腫に対するより効果的な照射スケジュールの提案が可能となる。さらに、16Gy照射群と同等の細胞生存率となるように、低線量照射群において、照射回数を増加させる実験を継続中であり、この結果から、それぞれのセルラインにおけるα/β値を算出する予定である。これにより、遺伝子変異の有無による個別化治療への応用が可能になると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
悪性膠芽腫のセルライン選定は予定通りであった。これは、LN229(PTEN wt/p53 wt)LN18(PTEN wt/p53 mut)U87(PTEN mut/p53 wt)U251(PTEN mut/p53 mut)といった、PTEN/p53/MGMTの発現それぞれ異なる4種類を入手可能であったためである。一方、照射線量に応じた至適コロニー数の細胞を準備することが予想より困難であった。それぞれのセルラインで感受性が異なるため、至適コロニー数の予想が困難で、複数回の実験を要した。さらに、一回大線量と同等の生物学的効果を得るための分割照射にも、予想より日数を要した。さらに、再現性を確認するために、複数回の検討が必要であることも、日数を要した原因である。今年度は、1回線量が高い照射スケジュール群で、細胞生存率が低いことが確認されたため、照射線量を同一にすることで結果をまとめ、分割照射の残りは、シグナル伝達系における実験と並行して行う予定とした。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、着目しているAKT/PKBに関与するシグナル伝達系とさまざまな1回線量、分割を用いた放射線照射の関係について研究を進める。まずPTEN、P53、MGMTの有無に注目して前年度実験を行った各セルラインを用いて、遺伝子発現を測定、確認する。測定は、当初予定していたRT-PCR法で行う。シグナル伝達については、ウェスタンブロット法で測定する。AKT/PKBに関与するシグナル伝達系として、mTORやアポトーシスとの関連が示唆されているシグナルを中心に研究を進める。実験で得られた細胞生存率と遺伝子発現、シグナル伝達の関係について、セルラインごとに検討する。1回線量、線量分割についても同時に検討する。進捗状況に応じて、AKT/PKBシグナル伝達系に関連する阻害剤と放射線との併用による細胞生存率、シグナル応答に関しても検討を考慮している。AKT/PKB以外のアポトーシス関連遺伝子であるc-Jun, GADD153についても、AKT/PKBのシグナル伝達系に関する検討が困難な場合は、代替として検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、当初予定していたシグナル伝達の発現に関する検討の前に、照射線量、線量分割に関する実験を先行して行ったため、シグナル伝達系の検討には至らず、未使用額が発生した。これは次年度にシグナル伝達系の検討に必要な試薬購入費として充当する。具体的には、各実験に必要な物品として培地、培養液、ディスポーザブル実験器具を予定しているほか、ウェスタンブロットに用いる抗体、PCR関連試薬の購入が必要である。大型実験機器については完備しているが、付随する消耗器具(顕微鏡関連等)については、更新が必要な場合、購入する。実験補助者の謝金支払が必要である。成果報告として旅費、学会参加費、論文作成関連費用が必要である。雑費として、通信費、印刷費が必要である。
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