悪性膠芽腫の4種のセルラインLN229(PTEN wt/p53 wt)LN18(PTEN wt/p53 mut)U87(PTEN mut/p53 wt)U251(PTEN mut/p53 mut)を用いて実験を継続した。これらは、PTENとp53の変異の有無に着目して選択した。前年度の結果から、特に野生型であるLN229では、8Gyを超える高線量の照射において生存率の低下が顕著であり、PTENとp53の変異の有無が細胞レベルの生存率に関与することが推測された。 本年は、AKT/PKBに関与するシグナル伝達系として、シグナルの下流に位置するmTORに注目して実験を行った。mTORの活性化は、細胞の増殖・生存のみならず、低酸素の誘導、アポトーシスの抑制、オートファジーの抑制など様々な応答を引き起こすことで放射線抵抗性に関与し、癌細胞の生存に貢献する。セルラインに放射線照射を行い、ウェスタンブロット法を用いて遺伝子発現を測定した。この結果、放射線照射によりリン酸化したmTOR抗体の発現が観察され、放射線照射によるmTORの活性化が確認され、治療抵抗性への関与が推測された。 現在、mTOR阻害剤を複数選択しセルラインへ投与を行い、リン酸化したmTOR抗体の発現を観察している。効果が得られる阻害剤を選択することと、前年同様に再現性の確認に日数を要したため、目標としていた放射線照射と阻害剤の同時投与まで至らなかったが、悪性膠芽腫の放射線照射におけるmTORの関与については引き続き検討する価値があるものと思われる。
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