研究課題
日本大学電子線利用研究施設ではパラメトリックX線照射(PXR)が可能で、その放射源としてシリコン完全結晶が採用されているが、将来の臨床応用を考慮すると高エネルギー化が必要である。それには格子定数の小さなダイヤモンド結晶の利用が有利と考え、高エネルギー化試験を行った。その結果、従来のシリコン結晶では達成していない最高X線エネルギー61keVでのPXR発生およびX線像取得まで達成できた。しかしながら、安定したPXRの発生および電子ビーム照射によるターゲット結晶の損傷、劣化に問題点が見つかり、今後の検討となった。ヨード化合物は、歴史的に放射線増感剤として研究されてきたこと、臨床的にX線イメージングで造影剤として使用されていることに着目し、我々は124I-HPPH合成の中間産物である非放射性ヨード化合物127I-HPPH(717)が新たな放射線増感剤として使用可能ではないかと考えた。白色X線照射装置を用いX線のピークエネルギーを、ヨードのK吸収端である33keVに設定し放射線増感効果を検討した。In vitroにおいてはT24ヒト膀胱癌細胞株を用いてWST assayおよびcolony formation assayを使用して生存率を評価した。717投与後X線照射群においてX線照射単独群に比較して生存率の低下が確認された。717の細胞内局在をorganelle probeおよび高速液体クロマトグラフィーを使用し評価したところ、主にT24のミトコンドリアに取り込まれることを確認した。717を投与したT24にX線を照射したところ、活性酸素の産生が確認され、これが放射線増感効果の機序の可能性が示唆された。In vivoにおいてはマウス背部皮下にT24を注射し腫瘍を作成し評価した。717を腫瘍に局注後X線照射群においてX線照射単独群に比較して腫瘍径の増大が抑制されていた。
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J.NIHON Univ.Med.Ass
巻: 72 ページ: 212-219
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