研究課題
MR分子イメージング手法の一つとして知られる「マンガン増感MRI」の手法を用いて、その造影メカニズムと造影される組織の特徴を明らかにすることを目的に研究を実施した。マンガンは非常に高い緩和時間の変化をもたらす重金属であり、特徴的な画像コントラストが得られることから、実験的な組織の変化を画像化するために用いられている。ラット脳虚血モデルを用いた実験では、虚血後にマンガン増感MRIを撮像し、詳細なT1値を取得した。その後、組織染色およびICP分析用の組織を摘出した。装置の不具合が生じて実験が一時中断したことの遅れにより、組織学的な評価に至っていない。一般的にグリアが増殖すると言われる領域の緩和時間が短縮し、マンガンが蓄積していることは明らかである。一方で、信号強度が上昇した領域において、虚血直後の状態を把握するためにT2強調画像および拡散強調画像により評価を行ったものの、信号強度に変化は見られなかった。このことより、浮腫などの傷害が発生していないことが分かる。一過性全脳虚血モデルは、短時間の虚血により徐々に神経細胞が脱落し、組織に明確な傷害が見られないのが特徴的なモデルであることから、病態は予定通りの状態に作成できていると考える。他に、ファントムを用いた緩和能の実験を行い、アルブミンの存在によって緩和能が変化することが明らかとなっており、今後は予定通り当該領域の濃度と緩和能の対比を行うことにより、マンガン蓄積の特異性を示すことができるものと考える。
3: やや遅れている
装置の不具合により、実験が一時停止したことが遅延の理由である。現在、その遅れを取り戻すように研究を進めている。また、この間に解析方法の検討などを終えていることから、データが揃い次第速やかに次の段階へ移行できる予定である。
前年度到達できなかった亜急性期のマンガン増感画像の取得および組織の摘出を引き続いて実施する。また、組織緩和能と造影剤の濃度を比較するともに、複数の緩和能を示すシュミレートファントムを作成し、緩和能のプロットを行うことで、タンパクにバインドされたマンガンのより詳細な緩和特性を示す。Imagingと染色による組織の評価に加え、代謝物の評価を行い、結果をまとめる。
研究費は、主に実験に使用する動物および薬品に使用する。また、必要に応じて電子部品の調達や研究に必要な調査に使用する。
すべて 2012 2011
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