研究概要 |
悪性腫瘍に対する新たな分子標的療法/遺伝子治療の確立として、我々はアポトーシス経路に着目し、in vitroにおけるその誘導においてBH3 interacting domain death agonist (BID)分子の重要性を、インターフェロン(IFN)-αの抗腫瘍効果増強と共に報告した (Tsuno T, et al, 2012)。本研究は、この研究成果をin vivoにおいても同様に示すことを目指すものであり、BID分子標的療法/遺伝子治療の有用性と安全性を検討することを主目的とする。平成23年度は、まずBID遺伝子包埋ベクターの樹立から始めたが、これに主な実験経過が費やされた。このベクターについては、我々が上記研究で報告したpIRES-BID ベクターをNational Institutes of Health (Bethesda, MD, U.S.A.)で作成、エンプティーベクターと共に精製した。次に腫瘍表面抗原を有する腫瘍細胞株として、我々がin vitro研究で使用し、かつインテグリン受容体を有するヒト肺癌細胞株 A549 (Xu F, et al, 2010) を選択、細胞培養を開始した。この腫瘍細胞を選択した結果、腫瘍特異的drug deliveryの方法として、簡便かつ理論的にも適していると考えられる合成環状ペプチドiRGDを選択、作成した。このiRGDはインテグリン受容体と結合し、腫瘍特異的浸透能力を示す環状ペプチドとして報告されている (Sugahara KN, et al, 2009, 2010)。上記のように我々は、pIRES-BID ベクターを使用したA549細胞への遺伝子導入の有効性をin vitroにおいて既に報告しているので、今後まず、ICR nuマウスにA549細胞を皮下接種し、腫瘍生着を確認する予定である。
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