研究概要 |
悪性腫瘍に対する新たな分子標的療法/遺伝子治療の確立として、我々はアポトーシス経路に着目し、in vitroにおいてBH3 interacting domain death agonist (BID) 分子の重要性を、インターフェロン(IFN) -αの抗腫瘍効果増強と共に報告した (Tsuno T, et al, 2012)。 平成24年度はまず予備実験として、我々が上記研究で使用したヒト肺癌細胞株 A549細胞をICR nuマウスに皮下接種した。そして、BID遺伝子包埋 (pIRES-BID) vectorまたはpIRESpuro3 (empty) vectorを、腫瘍特異的drug deliveryとして合成環状ペプチドiRGD (Sugahara KN, et al, 2009, 2010) と、免疫応答を誘導しない非ウィルス性遺伝子導入製剤in vivo jetPEI (Polyplus Transfection) ともに、遺伝子導入した。続いてIFN-αを投与し、その腫瘍標本からアポトーシスを確認した。 次にA549細胞皮下接種ICR nuマウスを、コントロール群、empty vector/iRGD/in vivo jetPEI 群、pIRES-BID/iRGD/in vivo jetPEI 群に分類した。更にempty vector群とpIRES-BID群を、IFN-α投与群とγ線9 Gy照射群に分類した。IFN-α投与群は更に、iRGD投与群または非投与群に分類した。以上9群 (n=6) とした。それぞれ8日間で3回繰り返し投与した。 結果として、IFN-α投与継続群かつiRGD投与群の方が、腫瘍抑制効果を示す傾向であった。またγ線9 Gy照射群はすべて死亡した。以上から、より長期間のIFN-α投与群と、より低線量の放射線照射群での結果が更に必要と考えられた。
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