研究課題/領域番号 |
23791458
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
渡部 茂 川崎医科大学, 医学部, 助教 (20368640)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 腎性全身性線維症 / Gd-EOB-DTPA / NSF / ガドリニウム / MRI / Gd-DTPA-BMA |
研究概要 |
Nephrogenic systemic fibrosis(NSF:腎性全身性線維症)は腎不全患者、特に透析患者において,皮膚の腫脹や硬化,疼痛などで発症し,進行すると四肢関節の拘縮を生ずる疾患で,磁気共鳴画像(MRI)検査において用いられているガドリニウム(Gadolinium:Gd)造影剤が原因あるいは発症のきっかけであると報告されている.その発症機序は,キレートより遊離したGdが皮膚などに沈着し,線維化を生じると考察されているが,詳細は不明である.本研究は肝特異性Gd系MRI造影剤であるGd-EOB-DTPAを含む,各Gd系MRI造影剤を投与したラットモデルを用いて,腎性全身性線維症(NSF)発症の危険性を比較検討した. 5/6腎摘ラットに各Gd系MRI造影剤を反復投与し,NSFモデルを作成した後,主要臓器のGd沈着についてICP質量分析を用いて定量化を行った.同時に組織学的評価を行い,Gd分布について高分解能蛍光X線を用いて解析を試みた. Gd-DTPA-BMA 群では組織へのGd沈着が強く,沈着量は腎臓>皮膚>肝臓>肺>脾臓>筋肉>横隔膜>心臓の順であった.Gd-EOB-DTPA群では組織へのGd沈着が最も微量であった.組織におけるGd分布については,Gd-DTPA-BMA 群で散在性の沈着が可視化できた.病理組織学的には,Gd-DTPA-BMA群でNSFに特徴的な皮膚所見と考えられる像が得られた.Gd-EOB-DTPAは他のGd系MRI造影剤に比べ,腎障害モデルラットの主要臓器へのGd沈着は軽微で,安定・安全な造影剤である.これはGd-EOB-DTPAの使用によるNSF発症のリスクが低い事を示唆している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腎障害ラットモデルの主要臓器におけるガドリニウム沈着について定量や可視化に成功しており,病理組織学的検討を含めて,腎性全身性線維症との関連についても検討できている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は肝障害と腎障害を有するラットモデルを用いて,Gd-EOB-DTPA投与後の主要臓器のGd沈着や組織学的変化の評価を予定している.
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次年度の研究費の使用計画 |
実際の研究進行程度に合わせた研究費使用により次年度使用予定の助成金が生じているが,これを含め,更なる研究遂行に必要な消耗品の購入,データ解析費用,成果発表や情報収集の為の旅費などの使用を予定している.
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