研究概要 |
血管狭窄・閉塞による脳卒中の診断において,脳血流量(CBF)測定は病態把握や治療方針の決定に有用な情報を与える。本研究では,近年の装置進歩により普及が進みつつあるCT perfusion法(CTP)の信頼性検証を,確立手法であるPETとの比較を通して行う。 本年度は,CBF計算アルゴリズム(deconvolution法 [sSVD, dSVD, cSVD])による差異,しきい値の影響,大血管除去処理の影響等を検証した。片側性の主幹動脈閉塞・狭窄例(n=27)に対し,CBFの患側‐健側比(CBF比)のPET‐CTP間の比較を行った。1)CTP CBF比は各要因で変化するが,deconvolution法の種類がもっとも大きな影響を持つ。2)CTP CBF比は,deconvolution法の種類に依存してPETに対して過大評価または過小評価となる。3)これらPETとの差異と,造影剤到達遅延(AD;CTPデータからの推定値)および毛細血管通過時間(MTT;PETデータからの推定値)の関連を検討したところ,deconvolution法により異なる依存性が見られた。4)この依存性は,計算機シミュレーションでも確認された。sSVD法で見られるAD依存性は誤差要因として広く知られてきたが,MTT依存性についてもその重要性が再確認された。5)cSVDでは特にMTT依存性が強く,MTT延長症例においてCBFコントラストの大幅な低下をもたらすことが臨床例でも明確になった。6)AD依存性,MTT依存性の観点からはdSVDが有利だが,計算時間,画質の点で課題が残る。より適切なdeconvolution法の導入が今後必要となる。6)CTPはCBF測定法としては十分ではないが,同時に得られるAD等のタイミングパラメータは十分な正確性を持っていると考えられる。今回の症例群に対して,CTPにより得られたADはMTT(PET)とよく相関し,今後の臨床的有用性の検証が待たれる。 今後は,上記内容を関連学会(日本脳循環代謝学会,Brain)で発表し,論文化する予定である。
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