近年、分子標的薬剤の発展が著しい。それら薬剤を効率良く用いるには全身の標的分子の発現状態を非侵襲的に分子病理診断する技術が求められている。そこで特にタンパク製剤に着目し、その活性を維持したまま、RI標識し、分子イメージングするための基盤技術開発を目的に本研究を行った。本課題は上皮性腫瘍に発現が見られるEGF受容体を標的分子とし、そのリガンド分子のEGFへRI標識を行った。本研究期間の2年目までに受容体への結合能を阻害しないように、EGF分子のN末端特異的RI標識を行う方法を開発した。また最終年度では理研から熊本大学へ異動したため、研究の大幅な変更に対応した。本課題では18F標識を行う予定であったが、異動先にはサイクロトロン、PET撮像装置が無く、替わりにイメージング装置としてSPECTがあったので、SPECT核種の標識を行い、SPECTで分子イメージング研究を行った。まずは、SPECT/CT装置の立ち上げを行った。DOTA-octreotateをプローブとして用い、標識核種としては67Gaを用い、SPECTの性能評価を行った。各種ファントームを用いて、放射能濃度直線性評価、空間分解能評価を行い、良好な結果を得た。次にソマトスタチン受容体を発現する肺小細胞癌腫瘍H69を植えたマウスを用いて67Ga-DOTA-octreotateを用いてSPECT撮像を行った。その結果、腫瘍組織にRI集積している画像を取得し、染色により標的分子の発現部位とRI集積部位が一致することを確認できた。 現在、昨年度までに到達したEGF標識前駆体の合成に変更を加え、SPECT核種標識法を検討している。EGFへの67Ga標識ではペプチドと異なり高温条件では変性する可能性がある。そこでN末端に修飾するキレーターを変更し、室温条件下で67Ga標識できるNOTAGAを適応するべく合成を行っている。
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