研究課題
本年度は、今まで分子プローブとしてほとんど開発及び評価されていないグレリン受容体(GHS-R)の開発を行うことを目的とした。ポジトロン放出断層撮影法(PET)を用いた摂食障害の診断と解明を目標とし、はじめにPET用核種の標識が可能なGHS-R選択的リガンドを探索し、PET用核種である18F標識が可能でありGHS-Rに対して高い親和性(Ki = 17 nM)を持つ6-(4-Chlorophenyl)-3-{[1-(2-fluoroethyl)piperidin-3-yl]methyl}-2-(2-methylphenyl)quinazolin-4(3H)-one(FEGRL1)を選択した。次にその前駆体及び標準品を合成し、18Fで標識した[18F]FEGRL1を合成した。マウスによるインビボ実験では、[18F]FEGRL1を静脈内投与することにより放射能集積は脳へ移行性したが、GHS-Rリガンド負荷では放射能集積が減少せず、特異的結合が見られなかった。しかし、GHS-Rが多く存在する胃では、[18F]FEGRL1投与により放射能集積がGHRS-Rリガンド負荷でわずかに減少した。[18F]FEGRL1は末梢でのGHS-Rを画像化できる可能性を示した。 次に、すでに開発したイミダゾリンI2受容体選択的リガンド[11C]FTIMDの超高比放射能化に成功し、ラット脳内でのイミダゾリンI2受容体の特異的結合をインビボで定量的に解析し、従来の[11C]FTIMDよりもラット脳内でのイミダゾリンI2受容体への結合能が有意に高いことを示した。超高比放射能[11C]FTIMDはイミダゾリンI2受容体濃度を感度高く反映できる優れたPET用プローブであり、摂食障害とイミダゾリンI2受容体濃度との関係の解明に有用であると考えられた。
3: やや遅れている
いくつかのPET用グレリン受容体リガンドを探索し合成したが、マウスによるインビボ実験により脳でのPET用リガンドとして有用なものが見つからなかった。そのため、達成度はやや遅れているとした。
さらに、PET用グレリン受容体リガンドを探索し、標識合成し、インビボ実験により評価し、有用なPET用グレリン受容体リガンドを開発する。同時に、有用なPET用イミダゾリンI2受容体リガンドを開発したので、摂食障害との関係についてPETを用いてインビボで評価する。PET用グレリン受容体リガンドが開発できなかったとしても、有用なPET用イミダゾリンI2受容体リガンド用いてグレリン受容体リガンドとの関係を評価し、イミダゾリンI2受容体及びグレリン受容体が摂食障害とどうのように関わっているかPETにより評価する。
新規PET用グレリン受容体リガンドの探索及び合成のための試薬、器具等を購入し、インビボ実験で使用する動物、試薬等を購入する。また、成果を国内外の学会に発表するための費用として使用する。
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Nuclear Medicine and Biology
巻: Vol. 39 ページ: 89~99
10.1016/j.nucmedbio.2011.07.008