研究課題/領域番号 |
23791469
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
永井 裕司 独立行政法人放射線医学総合研究所, 分子イメージング研究センター, 研究員 (20415409)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | パーキンソン病 / 遂行機能障害 / ポジトロンCT / ドーパミン受容体 |
研究概要 |
パーキンソン病(PD)は黒質線条体ドーパミン(DA)神経変性の緩徐な進行により特徴的な運動症状を呈する疾患であるが、物事を順序立てて行動することができないという「遂行機能障害」も病初期から認められることがある。しかしPD患者における遂行機能障害の出現時期(運動症状が出現する前なのか後なのか)およびその分子メカニズムはまだ明らかでない。一方DA神経毒MPTPの反復投与で作成できるサル類PDモデルは運動症状や病理学的特徴が類似しているため世界的に広く使用されており、運動症状出現前から様々な評価を行うことができるが、どのような遂行機能障害が認められるかまだはっきりとわかっていない。そこで本提案課題では MPTP反復投与PDモデルサルの作成過程において(1)運動症状に先行して障害される遂行機能コンポーネントを同定し、(2)PETによって運動症状出現時期の予測や関与する分子メカニズムを明らかにすることを目指している。ここでいう遂行機能とは「ある目標を達成するために行動を順序立てて計画し、周囲の状況の変化に臨機応変に対応し、実行に移す」ことである。「状況に応じて臨機応変に対応する」ことには「今までの行動を意識的に停止し異なる行動をとること」という要素が含まれ、ここでは認知的制御反応と呼ぶ。今年度はこの認知的制御反応を評価する遂行機能課題の訓練を開始した。また障害が遂行機能に特異的であるか検証するため、運動機能や情動(特に動機)に関する評価課題についても訓練を開始した。一方、これまでの自験データを用いてMPTP反復投与PDモデルサルの運動機能とPETによる線条体DAトランスポーター密度の経時的変化について解析したところ、運動皮質と密接に関係する外側被殻において有意な相関を認めたことから、同様の手法を利用することで障害された遂行機能に関わる脳部位をPETを使用して同定できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度、遂行機能評価課題の訓練を開始したが、課題の難易度がサルに対して高かったため難易度の調整に時間を要している。しかしながら一旦健常時のデータが取得できれば同じサルを用いてMPTP反復投与PDモデルサル作成するため、障害される遂行機能コンポーネントの同定は可能である。一方PETの評価はすでに確立されているため、遂行機能評価課題で得られた評価指標と組み合わせることで、障害された遂行機能コンポーネントに関与する脳内ドーパミン受容体変化をとらえるという目的が達成されると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は難易度を調整した遂行機能評価課題で訓練されたサルでMPTP反復投与PDモデルの作成を開始する。そしてモデル作成過程において運動症状(特に振戦)出現時期より前に障害される遂行機能コンポーネントについて明らかにしていく。また障害された遂行機能コンポーネントに関与する脳内ドーパミン受容体変化をとらえるため、D1受容体については[C-11]SCH23390、D2受容体については[C-11]FLB457をトレーサーとしてPET測定を適宜実施し、MPTP投与前からの変化について評価する。さらに運動症状出現時期を予測するため[C-11]PE2I等のドーパミントランスポーター用トレーサーによるPET測定を実施しドーパミン神経の変性・脱落度について評価する。これらの実験が滞りなく進むようスケジュール管理を徹底する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度はMPTP反復投与PDモデルサルを使って実験を進めていくことになるため、モデル作成に必要な試薬等やPET測定に必要な消耗品等を購入する。また遂行機能評価課題も継続して実施していくため、これに必要な物品や消耗品等も購入する。これら物品等の購入は実験進行に支障が出ないよう計画的に進めることを徹底する。
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