パーキンソン病(PD)は黒質線条体ドーパミン(DA)神経変性の緩徐な進行により特徴的な運動症状を呈する疾患であるが、物事を順序立てて行動することができないという「遂行機能障害」も病初期から認められることがある。しかしPD患者における遂行機能障害の出現時期(運動症状が出現する前なのか後なのか)およびその分子メカニズムはまだ明らかでない。一方DA神経毒MPTPの反復投与で作成できるサル類PDモデルは運動症状や病理学的特徴が類似しているため世界的に広く使用されており、運動症状出現前から様々な評価を行うことができるが、どのような遂行機能障害が認められるかまだはっきりとわかっていない。そこで本提案課題では MPTP反復投与PDモデルサルの作成過程において(1)運動症状に先行して障害される遂行機能コンポーネントを同定し、(2)PETによって運動症状出現時期の予測や関与する分子メカニズムを明らかにすることとした。 昨年度訓練を開始した遂行機能評価課題について改良を重ねた。またMPTP投与を1頭目の個体で開始したところ、1回目のMPTP投与により運動機能が著しく障害されほぼ寝たきりとなったため、[F-18]FEtPE2IによるPET測定で線条体DAトランスポーター密度を計測した。その結果MPTP投与前の約5%まで低下しており運動機能障害の原因と考えられた。このような運動機能が著しく障害された個体が得られたため遂行機能障害の検出が困難となったが、MPTPの感受性について事前評価の必要性が示唆された。
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