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2011 年度 実施状況報告書

DNA損傷修復欠損細胞を用いた重粒子線の生物効果に関する放射線化学的アプローチ

研究課題

研究課題/領域番号 23791472
研究機関独立行政法人放射線医学総合研究所

研究代表者

平山 亮一  独立行政法人放射線医学総合研究所, その他部局等, 研究員 (90435701)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード重粒子線 / LET / RBE / OER / DNA損傷修復 / 低酸素 / 酸素効果
研究概要

本研究課題は重粒子線特異的な生物応答を明らかにするため、DNA損傷修復欠損細胞を用いて細胞致死における放射線作用の役割を調べ、放射線生物学ならびに放射線化学の観点から機構解明を行う。初年度である平成23年度では、まず陽子線細胞照射を行うための照射場の作成ならびに無菌操作を行える実験環境の整備を整えた。続いて重粒子線を用いてCHO細胞、xrs6細胞(非相同末端結合関連遺伝子変異株)ならびに51D1細胞(相同組換え関連遺伝子変異株)の生存率曲線の作成を試み、各曲線から10%細胞生存率を得る線量(D10)を求めた。大気下および低酸素下でのD10比からOERを算出し、生物学的効果比(RBE)はX線を標準放射線として、X線のD10に対する他の粒子線のD10との比から算出した。OERやRBEを線エネルギー付与(LET)依存的に調べると、CHO細胞においては線エネルギー付与LETの増加とともにRBE値は上昇しLET 200 keV/micro meter付近に最大ピーク値が現われ、大気下および低酸素下で同じ傾向を示した。しかし、低酸素下でのRBE値の方が大気下よりも大きい値であった。OER値はLETの増加とともに減少し、200 keV/micro meter付近で1.2となった。xrs6細胞でも同様にLET-RBE,OER曲線を調べると、高LET領域においてピーク値を示さず、それは大気下でも低酸素下でも同じような傾向を示した。また、51D1細胞ではCHO細胞やxrs6細胞よりも小さいOER値を全てのLETポイントで示した。これらの結果より、重粒子線特異的な大RBEはDNA損傷修復機構の一つである非相同末端結合の有無が関与し、さらに小OERには非相同末端結合の有無が関与していることが明らかになり、重粒子線特異的な生物応答にはこれら二つのDNA損傷修復機構が深く関与していることが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

目的としていた陽子線照射における実験環境整備は整い、細胞照射が可能となった。しかし、ビームタイムの確保が難しく、予定していた細胞実験の半分が行うことができなかった。しかし、重粒子線を用いた実験では4つの異なる核種を用いて3つの細胞株の放射線感受性を明らかにすることができ、予定していた全ての実験が完了した。

今後の研究の推進方策

平成24年度以降は陽子線照射における放射線感受性を明らかにし、LET-RBE曲線を作成するための標準放射線として取り扱えるように準備する。また、重粒子線を用いた実験ではラジカル捕捉剤であるDMSOを用いて、放射線の直接作用と間接作用が細胞致死機序にどのように関わっているかを調べ、重粒子線特異的な生物応答と放射線の作用の関係を明らかにしていく。

次年度の研究費の使用計画

平成24年度は培養細胞を用いた実験を行うための試薬、プラスチック消耗品を購入するとともに、低酸素実験を行うための高純度ガスの購入を予定している。さらに昨年度得られた研究成果を国内・外で発表を行うための旅費等を計上している。また、一部のデータを学会誌へ投稿するための費用も計上した。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 2011

すべて 学会発表 (5件)

  • [学会発表] 重粒子線の直接作用がもたらす生物効果2012

    • 著者名/発表者名
      平山亮一
    • 学会等名
      第14回癌治療増感研究シンポジウム
    • 発表場所
      猿沢荘(奈良県)
    • 年月日
      2012年2月11日
  • [学会発表] Oxygen enhancement ratio for different particles2011

    • 著者名/発表者名
      Ryoichi Hirayama
    • 学会等名
      International Open Laboratory Radiation Quality Research Unit Kick-Off Meeting(招待講演)
    • 発表場所
      Darmstadt, Germany
    • 年月日
      2011年9月5日
  • [学会発表] トラック構造と生物効果2011

    • 著者名/発表者名
      平山亮一
    • 学会等名
      平成23年度京都大学原子炉実験所専門研究会
    • 発表場所
      京都大学原子炉実験所(大阪府)
    • 年月日
      2011年7月23日
  • [学会発表] X線ならびに高LET放射線によって生成されたDNA損傷の低酸素環境下での修復動態2011

    • 著者名/発表者名
      平山亮一
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第54回大会
    • 発表場所
      神戸商工会議所会館(兵庫県)
    • 年月日
      2011年11月18日
  • [学会発表] Direct action is the key to understand the high biological effects caused by particle beams2011

    • 著者名/発表者名
      Ryoichi Hirayama, Yoshitaka Matsumoto, Akiko Uzawa, Nobuhiro Takase, Chizuru Tsuruoka, Mami Wada, Miho Noguchi, Yuki Kase, Naruhiro Matsufuji, Atsushi Ito, Ryuichi Okayasu, Yoshiya Furusawa
    • 学会等名
      14th International Congress of Radiation Research
    • 発表場所
      Warsaw, Poland
    • 年月日
      2011-08-30

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公開日: 2013-07-10  

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