研究課題/領域番号 |
23791472
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
平山 亮一 独立行政法人放射線医学総合研究所, その他部局等, 研究員 (90435701)
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キーワード | 重粒子 / LET / RBE / OER / DNA損傷修復 / 低酸素 / 酸素効果 / 間接作用 |
研究概要 |
本研究課題は重粒子線特異的な生物応答を明らかにするため、DNA損傷修復欠損細胞を用いて細胞致死における放射線作用の役割を調べ、放射線生物学ならびに放射線化学の観点から機構解明を行ってきた。 平成23年度は、標準放射線とする陽子線の照射実験環境の整備を行った。さらに重粒子線を用いて培養細胞のRBEならびにOERのLET依存性を調べた。平成24年度は、陽子線照射施設内での無菌操作等の細胞培養作業が可能となり、CHO細胞ならびにDNA損傷修復欠損細胞を用いて、大気下ならびに低酸素下での陽子線細胞照射を行い、10%細胞生存率におけるOERを算出した。CHO細胞ではOERは~2.9であり、xrs6細胞(NHEJ関連遺伝子変異株)や51D1細胞(HR関連遺伝子変異株)ではOERは~3.6ならびに~2.5であった。重粒子線を用いた実験では、CHO細胞における細胞致死への間接作用の寄与率を算出した。炭素線LET 13 keV/micro meterを用いた間接作用の寄与率は大気下照射では~80%、低酸素下照射では~46%であった。大気下では細胞致死の主作用は間接作用であることが確認できたが、低酸素下の場合は低LET放射線にもかかわらず細胞致死の主作用が必ずしも間接作用に寄るものでは無いことが明らかになった。鉄線LET 200 keV/micro meterを用いた実験では、間接作用の寄与率は大気下では~42%、低酸素下では~32%であった。高LET放射線では細胞致死の主作用は酸素の有無にかかわらず直接作用であることが明らかになった。 低LET放射線では、細胞致死への放射線作用は酸素の存在によって大きく異なり、高LET放射線では酸素の関与は小さくなることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に整えた、陽子線照射施設での細胞実験により、CHO、xrs6ならびに51D1細胞での大気下ならびに低酸素下での細胞生存率曲線を作成することができた。また重粒子線照射では、CHO細胞の細胞致死機序に低・高LET放射線の間接作用がどの程度関与しているのかを明らかにし、炭素線LET 13 keV/micro meterでは大気下照射で~80%、低酸素下照射で~46%が間接作用によるものであることを明らかにした。また、鉄線LET 200 keV/micro meterを用いた実験では、間接作用の寄与率は大気下では~42%、低酸素下では~32%であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は研究期間3年の最終年度となるため、陽子線ならびに重粒子線に対する野生株およびDNA損傷修復欠損細胞の放射線感受性を、LET-RBE曲線ならびにLET-OER曲線としてまとめる。また、ラジカル捕捉剤であるDMSOを用いて、粒子線の直接作用と間接作用が、細胞致死へどの程度寄与しているのかを求め、LET依存的に変化するRBEやOERが直接作用と間接作用の寄与率の変化とどのように相関するのかを解析する。DNA損傷修復欠損細胞が示す、LET-RBE曲線ならびにLET-OER曲線においても放射線作用との関わりを調べる。これらの解析から、重粒子線特異的な生物応答を放射線化学的な観点から明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、培養細胞を用いた陽子線ならびに重粒子線照射実験を行うため、培養関連試薬、プラスチック消耗品および低酸素実験を行うための高純度ガスの購入を予定している。さらに前年度までに得られた研究成果を国内・外で発表を行うための学会参加費、旅費および宿泊費を計上している。また、一部のデータを国際誌へ投稿するための費用も計上した。
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