研究課題/領域番号 |
23791473
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研究機関 | 独立行政法人放射線医学総合研究所 |
研究代表者 |
久保田 佳樹 独立行政法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, 博士研究員 (40583076)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 超音波画像 / 動体追跡 / リアルタイム / 放射線治療 / 臓器運動定量化 |
研究概要 |
放射線治療時の安全な臓器運動計測法として、超音波画像からの臓器運動の定量化法の構築を目的として本事業を開始した。まず、予め撮影した被験者画像でシミュレーション実験を行ったところ、長時間の追跡を行うと対象物を見失うという問題を発見した。もの問題を解決するために動体ファントム画像を用いて、追跡アルゴリズムの改良・検証を行った。また、同時に進行していた「放医研 臨床研究 10-014」において、17人の超音波画像を撮影した。超音波画像撮影時に、データ収集PCの処理落ちの問題を発見し、PCのハード・ソフトの両面をアップグレードすることによってこの問題を解決した。 以上によって改良した追跡アルゴリズムと被験者画像を用いて実験した結果、当初の目標であった「リアルタイム処理が可能」「長時間の追跡が可能」という2点を実現した。追跡アルゴリズムについてと呼吸センサーとの比較結果について日本医学物理学会と日本放射線腫瘍学会で発表した。また、現在論文にもまとめている。 当初の研究実施計画では、3次元モデルを作成し、そのモデルを用いて3次元追跡を行うというものであった。しかし、放医研に設置してあった動体ファントムは超音波専用ではなく、ファントム可動域や水槽サイズの問題により、このファントムだけではモデル生成・精度検証は困難であると考え、また、予算内での動体ファントム製作も不可能であると判断した。そのためモデルをベースとしない追跡法を提案し、超音波画像の単純な1断面(水平)画像での2次元の追跡を可能とした。今後の課題としては、この方法を2断面(垂直・水平)画像での追跡に拡張し、その対応関係を見ることで3次元の変位を求めることを考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初のアルゴリズム方法論とはことなるが、別な方法を用いることで「リアルタイム処理」「長時間の追跡」を可能としている。方法の性質上、3次元追跡を可能としていないが、今後の拡張により仮想的ではあるが3次元追跡を可能とする。 また、「放医研臨床研究」によってすでに17人の被験者画像の撮影・収集が行えており、そのうち数例は臓器運動計測法の一つである呼吸センサーによる計測法と比較を行っている。さらに、医師にいくつかの画像のターゲット輪郭を入れてもらうことによって、追跡手法の位置ずれ精度の評価も行っている。このように、被験者画像の撮影については、ほぼ完了しており、また、提案手法の有効性についてはいくつかの評価をしているため、この点については次年度の計画予定について少し早まっていると考える。しかしこれらの評価法だけでは十分ではなく、今後さらに検討する必要があると考えている。 学会発表については、ほぼ当初の予定通り進んでいると考える。しかし論文投稿について少し遅れているため、早急に投稿したいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
現在完成している臓器運動の2次元追跡は超音波画像の1断面(水平)画像のみを使用しており、これを2断面(水平・垂直)画像に適応することによって仮想的ではあるが、3次元の追跡を可能とする。この時、それぞれの断面画像での変位結果を対応させることで、それぞれの画像での追跡精度の向上も測ることが可能であると考える。これらの方法については、すでに撮影した17人の被験者画像において実験・評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在データ収集PC上では、超音波画像データの収集ソフトはLabviewでコーディングしている。しかし、動体追跡プログラムはC++にてコーディングしており、一つのシステムとして動かす際には時間遅れの問題を考えてもLabviewでコーディングしなおす必要がある。当初の予定でも臨床用ソフトウェアの開発を想定している通り、このLabviewでの臨床用のソフトの開発に次年度研究費を使用する予定である。 また、前年度において使用しきらなかった装置改造や実験用ファントムにかかる研究費については、次年度で使用する予定である。 学会発表においては、次年度はほぼ前年度と同額使用予定であり、前年度使用できなかった論文投稿料については次年度に使用したい。 その他諸経費については、当初通り使用する予定である。
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