呼吸同期放射線治療における安全な臓器運動計測法として、超音波画像からの臓器動体の追跡法および臓器動体の定量化法の構築を目的として本事業を開始した。昨年度までの内容としては、1断面の超音波画像からの動体追跡アルゴリズムに(2次元動体追跡法)ついて開発し、「放医研 臨床研究 10-014」において撮影した被験者画像において、その有効性を検証した。結果として、複数の被験者の多種類部位(胆のう、静脈など)において、約5分間の安定した動体追跡が可能となった。これらの結果については、国際会議および国内学会で報告しており、現在論文投稿中である。 また、今年度はこれらの2次元動体追跡法をベースとした、超音波2断面画像を用いた3次元動体追跡アルゴリズムを開発した。そしてすでに開発済みである超音波用動体ファントムを用いた実験により、3次元動体追跡のその有効性を検証した。結果として、水中でのファントム動体においては長時間の安定した3次元追跡が可能であることが示された。この結果については、国内学会において報告した。被験者画像での3次元追跡の検証については、対象が超音波各断面画像内に収まっている場合には安定した追跡が可能であることが示されたが、対象となる物体が画像上からはみ出してしまう場合には、本提案手法の性質上、追跡が困難であるということが示された。長時間の安定した3次元追跡を実現するためには、3次元的に対象部位全体の撮影が可能な超音波プローブの選択や、構造的に全体の撮影が可能な対象部位の選択が必要であることが分かった。これらの結果については、今後論文にまとめる予定である。
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