研究課題
現在、陽子線治療の生物学的効果比は近似的に定数(1.1)が使われているが、将来的にはより正確に生物学的効果比の変化を考慮して治療を行うべきと考えている。今年度の目的は、陽子線治療のための最適なビーム設計の実現をめざし、物理的パラメータに基づいて生物学的効果を考慮した線量分布を計算する方法を確立することであった。まず、単一エネルギーの陽子線ビームに対して組織等価比例計数管で測定した線エネルギー(y*)分布と吸収線量分布をテーブル化した。そしてエネルギー変調したビームにおける生物学的効果と吸収線量の分布を、Modified microdosimetric kinetic modelとy*混合式を用いてモデル計算できるようにした。陽子線治療用ビームにおいてモデル計算した結果と、実際にビーム測定した結果とでは、飛程の後方を除いて良く一致することが確かめられた。このモデルを用いて、生物学的効果比を乗じた吸収線量分布を平坦にした拡大ブラッグピークを設計し、生物学的線量分布の投与線量や放射線感受性への依存性を計算した。また、ワブラー散乱体法とスキャニング照射法による生物学的効果の違いを推定することが可能になった。これらの成果は論文にまとめられており、将来、生物学的効果を考慮した最適な陽子線治療を実現する上で役立つことが期待される。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
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