研究課題/領域番号 |
23791479
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
稲垣 明子 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 助教 (20360224)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 膵島移植 / 移植・再生医療 / 重症糖尿病 |
研究概要 |
膵島移植は1型糖尿病の根治療法であるが、一人の患者の治療に2、3人のドナーを必要とするという問題点がある。その原因のひとつが、移植膵島と新鮮血の接触で起こる激しい炎症反応である。そこで本研究では細胞シートを応用し、膵島を新鮮血に直接触れない皮下に移植する方法の確立を目的とする。移植方法は皮下に膵島を細胞シートで被覆移植、または膵島と線維芽細胞で作製した膵島シート移植の2つである。また皮下への血管網を予め構築して血流を確保してから膵島を移植することで、移植成績の向上も目指す。本研究の成果はより少ない量の膵島で糖尿病治癒を可能にするために重要な研究である。また、皮下への膵島移植方法の確立は、侵襲の少ない治療方法として膵島移植が発展する上で大きな意義を持つ。本年度の研究の成果は以下のとおりである。(1)bFGF徐放デバイスによる皮下への血管網構築と細胞シート生着延長効果の検証 bFGFデバイス導入で新生血管構築を促し、皮下における血流不足を改善することで細胞シートの生着促進を目指した。しかし実験を進める中で、bFGFによる皮下での血管新生促進には、血液を含む浸出液の貯留を伴うことが判明した。膵島が血液と接触すると激しい炎症が惹起されるため、bFGF徐放デバイスによる新生血管誘導は膵島の皮下移植には適さないことが明らかになった。そこで、皮下に血管新生を誘導させるために、脂肪由来幹細胞の有用性を確認したところ、浸出液を伴わずに新生血管網を構築可能であることが確認出来た。また、細胞シートの作製方法や移植タイミングの詳細な検討を行った結果、皮下において細胞シートを生着させることが可能になった。(2)膵島シート作製方法の至適化 膵島を高密度に含有する膵島シート作製方法の至適化を行った。その結果、膵島密度、インスリン分泌機能が従来よりも高い膵島シートを作製することが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画調書では平成23年度は(1)bFGFデバイスによる皮下における細胞シート生着延長効果の確認と(2)膵島シート作製方法の確立を計画していた。 (1)のbFGF皮下における細胞シート生着延長効果の検証については、当初計画していたbFGFデバイスによる血管網構築が、血液を含む滲出液の貯留を伴うため膵島移植には適さないことが判明した。そこで、bFGFに換えて脂肪由来幹細胞による血管床の構築を試み、浸出液を伴わずに新生血管の構築が可能であることを確認し、皮下への膵島移植への適用に繋がる結果を得ることができた。また、細胞シート作製方法、移植タイミングの至適化を行った結果、細胞シートの皮下での生着が可能になった。よって、平成24年度の実験計画を遂行するために必要な検証は概ね実施できたと考えられる。 (2)膵島シート作製方法の確立は、膵島を従来よりも高密度に有し、インスリン分泌機能が高い膵島シートを作製することが出来たため、当初の予定通りの進行状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は本年度の結果をもとに移植実験を行い、細胞シートを用いた膵島移植実験を行い糖尿病が治癒効果を確認する。 実験はレシピエントをストレプトゾトシンで糖尿病を誘発したLewisラット、ドナーをLewisラットとした同種同系のラットモデルである。膵島を細胞シート(ケラチノサイトまたは線維芽細胞)で皮下に被覆移植、あるいは膵島シートを皮下に移植する。血糖値、体重を移植1、2、3、5、7、9、11、14日、以後は週に2回ずつ測定し、皮下への膵島移植による糖尿病の治癒効果を確認する。移植1ヶ月以降に糖負荷試験を実施し移植膵島の機能を評価する。さらに移植部位の組織を採取して、組織学的評価(HE染色、インスリン)を行い移植グラフトの量と形態を観察する。 研究を遂行していく上で、血流不足を原因とする移植膵島グラフトの生着不良が考えられる場合には、脂肪由来幹細胞で皮下に予め血管網構築し、そこに膵島を被覆移植、あるいは膵島シート移植を行い、糖尿病ラットの治癒効果を検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成23年度請求額とあわせて次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
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