研究課題/領域番号 |
23791480
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
村田 聡一郎 帝京大学, 医学部, 講師 (40436275)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 大腸癌 / 肝転移 / 脂肪酸合成酵素 |
研究概要 |
大腸癌は本邦において最も増加の著しい癌で年間10万人が発症し4万人以上が亡くなっている。大腸癌の再発転移は6~7割が肝転移であり、肝転移は化学療法が進んだ現在でも難治性である。脂肪酸合成酵素は主として肝臓に発現し、遊離脂肪酸を合成するのに必須の酵素である。この脂肪酸合成酵素が大腸癌をはじめとする癌特異的に発現が亢進し、脂肪酸合成酵素の阻害剤によって一部の癌細胞がアポトーシスを起こすことも明らかになってきた。本研究では脂肪酸合成酵素阻害剤を用いて大腸癌の肝転移に対する画期的な治療法を開発することを目的とする。 平成23年度は脂肪酸合成酵素阻害剤がヒト大腸癌細胞に有効であることを確認するため、1.ヒト大腸癌細胞株HCT116およびRKOに脂肪酸合成酵素阻害剤セルレニンを添加し、細胞生存率、増殖抑制効果を検討した。さらに現在大腸癌肝転移に対する化学療法で最も標準的なFOLFOXレジメンで用いられているオキサリプラチンとの相互作用を見るため、2.HCT116およびRKOにセルレニンとオキサリプラチンを添加して作用を検討した。またメカニズム解析として3.脂肪酸合成酵素、リン酸化Akt、活性化Caspase 3の発現を検討した。 1.ヒト大腸癌細胞株HCT116およびRKOにセルレニンを添加すると著明な殺細胞効果と増殖抑制効果が認められた。2.セルレニンはオキサリプラチンの殺細胞効果および増殖抑制効果を増強した。3.セルレニンの添加によりヒト大腸癌細胞の脂肪酸合成酵素とリン酸化Aktが減少し活性化Caspase 3の増加が認められた。セルレニンとオキサリプラチンの併用により活性化Caspase 3がさらに増加された。 以上より脂肪酸合成酵素阻害剤セルレニンはヒト大腸癌細胞のアポトーシスを誘導した。さらにセルレニンはオキサリプラチンの大腸癌細胞の殺細胞効果を増強した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト大腸癌細胞に対する脂肪酸合成酵素阻害剤の効果および現在最も標準的に用いられている抗癌剤に対する作用の上乗せ効果を明らかにし、今後の動物実験の成果に大いに期待が持てるため。
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今後の研究の推進方策 |
免疫不全マウスを用いたヒト大腸癌肝転移モデルを作成し、脂肪酸合成酵素阻害剤の肝転移治療効果を検討する。また現在肝転移に対し標準的に用いられている抗癌剤オキサリプラチンとの併用効果を動物実験でも証明する。主な検討項目は生存率、肝転移個数、体積、腫瘍径、肝機能、腫瘍内のアポトーシス細胞の検出頻度などである。 平成23年度の研究費の繰越額が生じた状況は異動に伴い研究環境の整備に時間がかかったため一部実験が平成24年度に繰り越されたためである。細胞培養実験の一部を平成24年も引き続き行う。実験の内容は脂肪酸合成酵素阻害剤セルレニンとオキサリプラチンの相乗効果のメカニズムの詳細な解析である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費はマウス購入費および試薬購入費に主にあてる。またサンプルの解析費用にも充当する。論文作成にかかる費用にも用いる予定である。 平成23年度の研究費の繰越額は脂肪酸合成酵素阻害剤セルレニンとオキサリプラチンの相乗効果のメカニズムの詳細な解析を行うための細胞培養実験の試薬購入に充てる予定である。
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